成果が出る広告クリエイティブの作り方 | 基本からデザインのポイントまで徹底解説
広告における「クリエイティブ」とは、広告配信に用いるテキストやバナー(静止画)、動画などを指すことが一般的です。インターネット広告の市場が拡大しているいま、成果を上げる広告クリエイティブを作ることの重要性はますます高まっています。
本記事では、狙った成果の出る広告クリエイティブを作るための基本から、最新のAI技術をどのように広告クリエイティブに採り入れるかという考え方まで、広告クリエイティブを作る具体的な手順やポイントとあわせてご紹介します。
●目次
広告業界での「クリエイティブ」とは何を指す?
「クリエイティブ」という言葉はもともと「創造的」「独創的」といった意味の形容動詞ですが、広告業界での「広告クリエイティブ」とは、広告に用いる制作物自体を指す名詞として使われています。
例えば、Google広告では「クリエイティブとは、ウェブページやアプリなどのデジタル環境でユーザーに配信する広告のことをいいます。クリエイティブは、画像、動画、音声などの形式でユーザーに配信されます。」と定義しています(※1)。
ただし、下記表のように、広告に用いる素材自体を呼称することもあるため、「クリエイティブ」が何を指しているか、場面ごとに確認するのがおすすめです。
使用意味 |
よく言い換えられる例 |
使用例 |
創造的・独創的という意味の形容動詞 |
創造的 独創的 |
・将来はクリエイティブ(創造的)な仕事をしたい ・とてもクリエイティブ(独創的)なアイデア |
制作された広告のこと |
広告の制作物 アウトプット 広告のバナー(画像)・動画・テキスト |
・この新しいクリエイティブ(動画)は高い成果を上げた ・入稿するクリエイティブ(バナー)のサイズを確認 |
広告に使う素材のこと |
画像・写真素材、音声素材、動画素材 |
・クリエイティブ(画像素材)をバナー用のサイズに加工 ・カメラマンからクリエイティブ(動画素材)が届く |
部門・職種のこと |
広告制作/企画開発部門 ディレクター/デザイナー/プランナー |
・クリエイティブ(プランナー)に新しいバナーを依頼 ・クリエイティブ(企画開発部門)のチェックをとおす |
※1 クリエイティブとは - Google アド マネージャー ヘルプ
・広告クリエイティブは媒体や種類により変わる
広告は大きくテレビCMや新聞広告などのオフライン広告と、SNSやディスプレイ広告のようなオンライン広告に分かれます。広告クリエイティブは、掲載する媒体によって、形式や見せ方、掲載するサイズが異なるため、ひと口にクリエイティブと言っても表現はさまざまです。
近年はインターネット広告の市場が伸びており、2023年の調査では、インターネット広告費は3兆3,330億円と、総広告費全体の45.5%を占めるようになりました(※2)。次の章から、日々重要性が増すインターネット広告のクリエイティブの作成方法について解説していきます。
※2 2023年日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0312-010700.html
広告クリエイティブの作成手順
インターネット広告には、特定の掲出面や期間を指定する予約型広告と、入札方式でさまざまな媒体に広告を表示させる運用型広告があり、現在は運用型広告が主流です。
運用型広告はリアルタイムなデータに基づいて、掲出する媒体やクリエイティブを最適化できるため、運用型広告のクリエイティブは複数案制作し、より高い成果を求めて常に改善し続けることが前提となります。そのため制作スピード、検証、改善をし続けられる制作サイクルを加味したクリエイティブ制作が必要なのです。
制作の手順は以下のとおりです。順を追って説明していきます。
1. プランニング
2. 構成案を作成
3. デザインを作成
4. 効果検証・クリエイティブ改善
1. プランニング
まず、広告で重要なのは企画・プランニングです。以下の項目をチェックして、いつどこで、誰に向けて配信する広告なのかを確認しましょう。
・何のための広告か(認知向上または申し込み獲得など)
・誰に向けた広告か(年齢・属性・趣味嗜好・行動)
・いつどこで配信されるか(掲出媒体・タイミング)
・どのような形式か(動画・バナーなどの形式およびサイズなど)
・広告の遷移先はどこか(広告LPまたはWebサイトなど)
・どのように感じてほしいか(訴求する軸・キャッチコピー)
大切なのはターゲットの行動や心理を深く理解することです。そのためには、カスタマージャーニーマップを作ってみましょう。ユーザーの行動や感情、商品との接点などを、ユーザーが商品を知る前から購入するまでの段階ごとに書き込むことで、各段階での顧客のニーズや課題が明らかになります。
ユーザーがどのような状態・感情のときに出す広告かがわかったら、その状態・感情のユーザーを後押しするにはどのような訴求・コピーが良いかを検討してください。
2. 構成案を作成
ターゲットと訴求する切り口が決まったら、構成案を作成しましょう。構成案はラフとも表現し、デザインのもととなる設計図のようなものです。例えば、バナーの作成であればテキストやロゴなど画像中に入れるべき要素を洗い出し、それらをどの程度のバランスで入れ込むのかを指示します。
構成案作成では以下の点に留意しましょう。
・掲出する配信面のサイズに合っているか
・モバイル版で閲覧しても読みにくくないか
・値段やロゴ、日時など必要な情報は網羅されているか
・広告で審査落ちしそうな不適切な表現がないか
・遷移先のページとの連動性はあるか
・情報に優先度を付けられているか
3. デザインを作成
構成案で決定したアイデアをもとに、デザインを作成していきます。ブランドや企業のイメージも勘案しながら、配色、フォント、細かいレイアウトを決定していきます。
運用型広告では、実際に運用しながら成果の高いクリエイティブを選定していけるので、訴求切り口やデザインを分けて複数案作成するのがおすすめです。
レイアウトのパターンに行き詰まったら、バナーなどのさまざまな広告クリエイティブが集められているギャラリーサイトを覗いてみるのもよいでしょう。また、今までのクリエイティブの配信結果を確認して、どのようなデザインパターンだと成果が出やすいのかを検討するとより効果的です。
4. 効果検証・クリエイティブ改善
デザインが完成したら、効果を検証していきましょう。A/Bテストやユーザーレビューなどを用いて、リリースする前にテストしたり、実際に運用しながら検証したりしていきます。
検証は施策のKPIに基づいて定めた評価指標で行います。例えば、獲得目的のクリエイティブであれば、CVR、CPA、コンバージョンなどで評価していくことが多いでしょう。しかし、単純に指標の数値をみて成果が上がった・上がらなかった、と判断するのは危険です。より効果的に改善するには、クリエイティブへの評価もいくつかの要素に分解し、さらにクリエイティブ以外の成果の変動要素を理解したうえで、深く考察していくことが重要です。
例えば、以下のような点を踏まえたうえで、クリエイティブを評価していく必要があります。
要因カテゴリ |
チェック項目 |
媒体 |
・媒体ごとの掲載面の違いが影響していないか ・媒体の配信アルゴリズムが影響していないか |
ターゲット |
・どのようなインサイトでユーザーは行動したのか |
クリエイティブ |
・成果へのインパクトが大きいパーツはどれか (キャッチコピー/画像/トンマナなど) ・どのような意図でその訴求内容したか ・獲得までの導線がどのようになっていたか |
外的要因 |
・季節やトレンド要因が影響していないか ・競合の出稿状況が影響していないか |
成果が出る広告クリエイティブのポイント
ここからは、効果的な広告クリエイティブを作るうえで、押さえるべきポイントを紹介していきます。
訴求が一瞬で伝わるコピーワーク・デザインに
広告クリエイティブで成果を出すには、何よりもユーザーに適切な訴求メッセージが伝わることが重要です。昨今ユーザーがインターネットで触れる情報量は膨大で、情報の取捨選択にかける時間は極端に短くなっているといわれています。そのため一瞬で判読できるような、伝わりやすいコピー・レイアウト・素材(キービジュアル)でバナーを構成することが必要です。
メイン訴求となるメインコピーは、一番最初に目に飛び込むように、大きく目立つ場所に配置しましょう。情報の優先度で文字等の要素別にサイズを調整し、ユーザーに読んでほしい順番を考えて、視線誘導できるように設計してください。またその際に、コピーの文字量は人間が一目で理解できる文字数といわれる10文字前後を意識するとモバイルユーザーにもやさしいです。
画像はユーザーの趣味嗜好と合致し、視認性が高い画像を配置しましょう。配信媒体との親和性が良いものや、目を引くものもおすすめです。小さすぎて何の画像かわからないものは避けてください。
遷移先となるLPと連動性をもたせる
インターネット広告では、バナーや動画をクリックした際に遷移するLPを設定します。LPは、ブランドサイトのトップページや商品詳細ページなど、広告用に制作したペライチのページを用いることが一般的ですが、広告クリエイティブと遷移先でコミュニケーションに連動性がないと離脱につながってしまうので、注意が必要です。
例えば、「50%OFFの洋服セール」がメイン訴求のバナーなのにもかかわらず、遷移先ページの冒頭が新着ブランドの紹介ばかりで、50%OFFの商品がサイトの下部に配置されていた場合、ユーザーは求めていた情報がないと判断し、早々に離脱してしまうかもしれません。どのようなページに遷移させるかを確認して、違和感のないストーリーを組み立てましょう。
トーンや演出は媒体・配信面に合わせる
キービジュアルの色味や文字量、文字サイズ、レイアウト、演出などは、媒体や配信面の特性を意識して制作することで、よりクリックされるようになります。例えば、Instagramは視覚情報に特化したSNSなので、文字情報よりも画像をメインに据えたクリエイティブが好まれます。一方、X(旧Twitter)は画像とともに配信される見出しや説明文も読まれやすいため、広告文と合わせたレイアウトを検討しましょう。
また、広告クリエイティブであっても、素人が投稿したような演出のほうがクリックされることもあります。例えば、ニュースメディアなどに出稿されるインフィード広告の場合、きっちり加工して文字も入れ込んだバナーよりも、メディア記事のサムネイルと同じレベルに揃えた無加工の画像のほうが効果的なこともあります。
配信を予定している広告媒体の特性に合わせた作り込みを意識することが重要です。
コンテンツとして見てもらえるクリエイティブを
インターネット広告市場の拡大とともに、ユーザーの広告に対するリテラシーも上がっており、広告接触が増えたことで、パターン化された広告に忌避感を覚えるユーザーもいます。そこで重要なのは、ユーザーへの「驚き」や「楽しさ」、「新しい気づき」の提供で注目を引き、コンテンツとして見てもらえるような広告クリエイティブです。
割引率やスペックを訴求する王道のクリエイティブももちろん必要ですが、「こんな使い方があるのか」「ストーリーが楽しい」「こんな未来が待っているのか」と、ユーザーを前のめりにさせるようなクリエイティブの必要性は、今後ますます高まっていくでしょう。
広告クリエイティブにAIは活用できる?
AIの活用が、広告クリエイティブの制作プロセスの効率化や新しい可能性につながると期待している方も多いのではないでしょうか。すでに、広告代理店などでは、AIをプランニングや素材生成に使っているところもあります。
例えば、「1. プランニング」の章で紹介したカスタマージャーニーマップは、プロンプトやノウハウをAIに学習させることで基本的な内容を記載させることが可能です。また、広告クリエイティブに用いる画像素材やキャッチコピーをAIで作ることで、スピーディに作成でき、コストも削減できます。
ただし、ユーザーの共感や発見、楽しさを生み出すクリエイティブな発想力は、まだまだ人間のほうが強いです。そこで、すべてのプロセスをAIにまかせるのではなく、人間の発想力とAIを組み合わせることで、今までにないシナジーを生み出すことが求められていくでしょう。
まとめ
インターネット広告は、AIが生まれたことでより一層変化しつつあります。日々進化する技術やフレームワークも採り入れながら、ユーザーにも広告主にもうれしい広告クリエイティブを作っていくことが求められています。
まずは、広告クリエイティブの制作経験を増やすことで、少しずつ深い洞察力が身に付き、成果につながっていくでしょう。
〈監修・執筆者情報〉
監修:
第一クリエイティブ本部 塩見 未寛(Hakuhodo DY ONE)
経歴:
アフィリエイト事業をおこなう広告代理店でのライター・ディレクション・コンサルを経て、2019年アイレップ(現・株式会社Hakuhodo DY ONE)に入社。大手健康食品、化粧品、飲食など幅広い業種で獲得領域のクリエイティブ戦略設計、制作進行に従事。社内勉強会でLPや記事LPの講師も務める。
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