なぜ売上が変わる?POP(Point of Purchase)広告と、その効果を解説

はじめに

購買時点広告(POP広告)は、消費者が商品やサービスを手に取るかどうかを判断するタイミングに合わせて設置されるため、大きな影響力を持ちます。店内に足を踏み入れた瞬間から目に飛び込むディスプレイやポスターは、その場で購買を後押しする重要な要素となります。

本記事では、POP(Point of Purchase)広告の基礎から具体的な効果メカニズム、デザイン設計、事例紹介までを体系的に解説します。

●目次

POP(Point of Purchase)広告の基礎

・POP広告の定義と購買時点広告の位置づけ

POP広告とは「Point of Purchase Advertising」の略で、購買時点で商品やサービスの購入を後押しする広告手法を指します(参照*1)。消費者が実際に商品を購入するかどうかを検討する店頭に表示することで、最終的な購買行動を促す役割を果たします。
これらの広告には
・棚の端のデモブース
・陳列ラベル、
・ポスター
・のぼり
など、さまざまな形態が存在します。

購買時点広告とも呼ばれるPOP広告は、価格だけでなく、商品の魅力やキャンペーン情報を伝えられる点が特徴であり(参照*2)、店外での広告に比べ、購買行動に直結しやすいのが大きな強みです。
たとえば、商品にまつわるストーリーやお得感を訴求する情報を伝えることで、計画外の購入を引き起こすこともあります。ただし、使いすぎると店内が過剰な情報で埋め尽くされ、ブランドイメージを損なう可能性もあるため、バランスを保つことがポイントです(参照*1)。

よく混同されがちな言葉としてPOS(Point of Sale)があります。POSは一般に、レジなど決済が行われる場所や決済システムそのものを指します(参照*3)。一方でPOP(Point of Purchase)は、店内ディスプレイを中心とした広告全般を意味し、会計プロセスよりも一歩手前の購買行動を支援する目的があります。たとえば商品の特徴や期間限定キャンペーンなどを見せ、消費者がレジに向かう前に商品に興味を持たせる役割を担います。

POPは商品の価値を視覚的に訴求し、購買決定を引き寄せるマーケティング的要素が強いです(参照*4)。たとえば、レジカウンターすぐ横に小型の商品棚を置いてPOP広告を表示し、衝動買いを促す手法は広く用いられています。こうした両者の違いを理解したうえで配置戦略を練ることが、効果的な店頭施策には欠かせません。


・店頭におけるPOP広告の重要性

店頭は、家庭から店舗に向かう途中で考えていた購入計画を、実際に行動に移す最終地点です。このタイミングでPOP広告が機能すると、消費者との接点が購買決定に直結しやすくなります。実際に、店頭で行われる購買決定は全体の7割から8割に達するとする研究があり(参照*5)、購買時点での訴求がもつ影響力の大きさを示しています。

また、POPは店内の雰囲気づくりにも貢献します。季節感あふれるデザインや、視線を集める演出があると、消費者は商品を自然に手に取る可能性が高まります(参照*1)。購買時点広告の意義は非常に大きく、競合商品が並ぶ売場で目立ち、興味を引き立てることが、POPの本質です。

POP広告の効果メカニズム

・衝動買いと計画外購買の喚起

多くの消費者は店に足を運ぶと、あらかじめ決めていた商品だけでなく、予定になかったアイテムまで購入することがあります。これが衝動買いや計画外購買と呼ばれる現象で、POP広告はその誘因として強く機能します。店頭に設置された目新しいディスプレイや限定セールのPOPを見て、「買うつもりはなかったが手に取った」という経験をした人も多いでしょう(参照*3)。

実際に、SHOP!などの業界団体が実施した研究では、店舗訪問1回につき少なくとも1品は計画外の購入が発生するとの報告もあり(参照*5)、POP広告は衝動性を高める大きな後押しとなっています。特にカウンター周りや通路の端(エンドキャップ)に配置された商品のPOPは、視界に入りやすく、購買を誘発しやすいのが特徴です。コンビニエンスストアのレジ横に置かれたお菓子や雑誌なども、計画外購買を狙った戦略的配置の一例です。


・ブランド認知と意思決定補強の役割

POP広告は、衝動的な購買を促すだけでなく、ブランドイメージを補強する役割も担います。たとえばテレビやネット広告で興味をもった果汁飲料が店頭で魅力的にディスプレイされていると、購入の最終判断を後押しします。「最後の3フィートの媒体」と表現されるように、POPは消費者・ブランド・決済が交わる唯一の場所であり、購買意思決定を仕上げる最終段階として機能します(参照*6)。

1997年にPOPAI(Point-of-Purchase Advertising Institute)の会長Dick Blatt氏が「店頭での購買決定は全体の75%以上」と指摘したように、POP広告はメディアミックスにおいて重要な位置づけを持っています。
たとえばMeyers Research Centerが開発したブランドリフト指数(BLI)は、POP広告がある場合に店舗でのブランド購入が大幅に増加することを示しています(参照*6)。特に写真用品のカテゴリでは47倍ほどの購買を後押しするという結果もあり、ブランドに対する高い信頼と認知を確立する役割が大きいといえます。


・費用対効果とROIの優位性

テレビCMやWeb広告と比較して、POP広告は費用対効果に優れているとされています。たとえば1000人に対する広告費を表すCPMという指標で見ると、テレビ広告が数ドルかかるのに対し、POP広告は数セントで済むこともあるという調査があります(参照*3)。
また、店頭のディスプレイ1ドルあたりの売上増加を算出するPVV(推奨価値)という概念もあり、1ドル投資すると4.99ドルの追加売上が得られる例が報告されています(参照*5)。

こうした数字は、企業やブランドがPOP広告を用いたアプローチに注目する理由を裏付けます。POPがもたらすプロモーション効果は、店頭売上の一時的な伸びだけでなく、繰り返し来店やブランドファンの増加にも結びつきます。小規模予算でも展開が可能なため、新商品へのトライアルを促したい場合などにも適した手段といえるでしょう。


・若年層や健康行動への影響リスク

一方で、購買時点広告の影響力が大きいことから、若年層や健康に関わる商品への波及効果が懸念される場合もあります。特にタバコ産業では、販売促進費用の97%以上を小売環境に費やし、店舗内広告や割引策略で商品を安く、目立つようにする事例が報告されています(参照*7)。
また、タバコ製品や電子タバコが菓子や飲料の近くに置かれたり、子どもの目線に合わせた高さに配置されたりすることで、健康リスクの高い製品への興味を誘導することが指摘されています(参照*8)。

こうした状況は、社会全体でPOP広告の在り方について考えるきっかけにもなります。若年層も含めた幅広い消費者にとって店頭での体験は購買意欲を掻き立てる一方、特にタバコやアルコールなど、身体への影響が大きい商品に対しては適切なガイドラインや規制が欠かせない場面もあります。

POP広告の種類

・店頭ディスプレイの主要タイプ

POP広告として最も一般的なのが、店内の通路や商品棚に設置されるディスプレイです。代表例としては、
・エンドキャップ
・フリースタンディング型
・バナースタンドなどが挙げられます(参照*9)。
エンドキャップとは通路の端に設置される小型の棚やラックで、消費者の動線を利用して目立たせる手法が特徴です。フリースタンディング型のディスプレイは、商品をダンボール等でまとめて陳列し、遠くからでも視認しやすい点が特徴です。

また、バナースタンドはスペースを取らずに大きな情報量を訴求できるため、キャンペーン告知などで活用されることが多いです(参照*10)。実際の商品を展示しないため、補助的なPOPとして位置づけられるケースもあります。


・一時設置と長期設置のディスプレイタイプ

POPディスプレイには、短期間だけ使用されるテンポラリー型と、ある程度の耐久性をもって長期的に設置されるパーマネント(あるいはセミ・パーマネント)型があります(参照*10)。テンポラリー型は、季節ごとのキャンペーンや新商品の発売期間など、特定の時期に集中して購買意欲を高めるのに有効です。素材としては段ボールがよく用いられ、軽量かつ廃棄も簡単なため汎用性が高いといえます。

対してパーマネント型は、木材やメタル、プラスチックなど頑丈な素材で作られ、長期的にブランドイメージを浸透させる目的で使用されることが多いです。例えばレジカウンター背面の大型棚やショーケースなどが該当します。


・デジタルPOPとインタラクティブディスプレイ

近年、デジタルサイネージやセンサー技術を活用したインタラクティブなPOP広告が増加しています。動画や音声を使ったディスプレイは実物の商品以上の情報を伝えられるため、興味を引きやすい特徴があります(参照*11)。また、消費者がタッチ操作で商品情報やキャンペーンを選択できるインタラクティブディスプレイは、店頭体験をエンターテインメント化し、ブランドへの好意度を高める効果があります。

デジタルPOPは、例えば特定の地域や天候に合わせた広告を切り替える、利用者の動きに反応して表示内容を変化させるなど、DOOH(Digital Out-Of-Home)ネットワークと連動させるケースも見られ、オンラインのターゲティング技術と組み合わせることでよりパーソナライズされた情報を発信できます。


・レジ周りと売場通路におけるPoint of Purchase活用

最終的に決済を行うレジ周辺は、非常に高い注目度を誇るエリアです。消費者が必ず通る導線であるため、小型の棚やポップアップスタンドを置くことで、思いがけない商品を手に取る動機を作りやすいのです(参照*12)。例えば低価格のお菓子やドリンク、雑誌などは、レジ待ちのわずかな時間で「つい買ってしまう」商品として広く活用されています。

また、店内の主要通路は高い通行量を活かせるため、シーズン性のあるアイテムや大幅値引き中の商品をPOPディスプレイで大胆に訴求できる場として利用されます。入口から中央付近にかけて特別なキャンペーンを展開すると、購買意欲を増した状態で店内を回遊する動機を作ることもできます(参照*11)。こうした戦略的配置によって、店内全体でPoint of Purchaseの効果を最大化できます。

購買時点での効果を高めるPOP広告設計

・視認性とデザイン要素

上手なPOP広告でカギとなるのが、一目で消費者の興味を引きつける視認性です。色のコントラストを強調し、アイキャッチ効果を狙うことで、他の商品や広告に埋もれないデザインを実現します。ロゴやブランドカラーなどの要素を繰り返し使うことで、企業イメージを浸透させることも重要です(参照*3)。

また、商品の魅力を具体的に伝える高品質なビジュアルや短いテキストも効果的です。静止画やイラストだけでなく、動画やアニメーションを取り入れることで、より多くの情報をわかりやすく発信できます。特に商品を使用しているシーンやビフォーアフターを示す演出は、機能性を直感的に理解しやすくなります。


・メッセージと行動喚起

POP広告のコピーとしては、「数量限定」や「今だけ割引」など、際立った行動喚起(CTA)を盛り込むことで、消費者の購買スピードを高めることができます(参照*3)。「今すぐ手に入れないと損になる」という心理的な緊張感を与える手段です。ただし、過度な煽り表現はブランドの信頼を損ねる可能性もあるため、バランスが大切です。

また、インタラクティブな仕掛けを取り入れることで、消費者に自発的な参加を促すこともできます。QRコードを読み込むと動画やクーポンが出現する仕組みや、サンプル品を試せるイベントを組み込むなど、POP広告を単なる掲示物から体験型のものへと進化させる例も増えています(参照*4)。


・配置戦略とPoint of Purchase環境設計

店頭のどこにPOP広告を配置するかは、売上を左右する重要な要素の一つです。入口やレジ周りだけでなく、消費者が商品を探して回遊する通路上にも定期的にPOPを配置することで、複数回の接触機会を生み出せます(参照*11)。また、商品カテゴリーごとに差別化したメッセージやビジュアルを用いるなど、環境全体で統一感を持たせつつ、各商品の魅力を際立たせることが重要です。

さらに、購買行動のデータ(販促効果や来店者の動線など)を元に最適な配置を検討する手法も有効です。定量的な計測に加えて、スタッフの意見や顧客からの生の声を活かすことで、より精度の高い設計が可能となります。例えば、棚の高さや照明の当たり具合など、細かな店舗内環境の調整がPOPの効果を左右するケースも少なくありません。


・データ活用と効果測定

POP広告の成果は、売上データや購買頻度の変化、顧客満足度など、複数の指標で測定されます。特にデジタルサイネージの場合、表示回数や反応率などをリアルタイムで追跡できるため、細かな改善を重ねることで費用対効果を高めやすいのがメリットです(参照*11)。実店舗とECサイトを連動させた施策に取り組む企業も増えており、どの経路から購買が起きたのかを把握する試みが一般化しつつあります。

さらに、POSシステムと連携することで、購買履歴とPOP表示状況の関連を分析することも可能です。特定のキャンペーン期間中だけ売上が上がった場合は、そのPOP広告がどの程度寄与したかをデータで示しやすくなります。こうした測定指標を積極的に活用することで、今後のPOP設計や配置戦略を最適化し、成果を向上させるサイクルを回すことができます。

事例と業界標準から学ぶPOP広告戦略

・国際的な業界団体と研究知見

POP広告の分野には、国際的に活動する団体がいくつか存在します。たとえばPOPAI(The Point-of-Purchase Advertising Institute)は、世界中で1500以上の会員を持ち、店頭広告の研究や教育活動を行い、グローバルなPOP広告の進化を促進しています(参照*6)。
またSHOP!(Shop!)やPath to Purchase Instituteなども、研究やベストプラクティスの共有、業界フォーラムの主催などを通してPOP広告の普及に寄与しています(参照*5)。

これら団体の研究によれば、店頭でPOPを用いた場合、売上が最大で65%増加する可能性があるなど、具体的なメリットが提示されています。同時に、電子タバコやアルコール飲料のような製品カテゴリでは、POP広告が社会的・公衆衛生的観点から議論を呼ぶ事例も頻繁に取り上げられています。業界団体は販促手法と公共政策のバランスをとることもミッションとしており、今後もPOP広告が幅広い角度から注目され続けると考えられます。


・店頭アワードと優良POP事例

POP広告の評価制度として、一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会が主催する「JPM POPクリエイティブ・アワード」が存在します。たとえば2021年には「「三ツ矢の日」リモート接客売場演出キット」が経済産業大臣賞を受賞し、2022年の経済産業大臣賞には「量り売り堂」が選ばれるなど、革新的なアイデアが毎年表彰されています(参照*13)。

また、Shop! OMA(Outstanding Merchandising Achievement)Awardsなどの国際アワードもあり、日本の優秀な作品が海外でも評価を得るケースが増えています。たとえば店舗全体をブランドの世界観で統一したベンダーショップ形式や、デジタル技術を用いたインタラクティブなPOPディスプレイが注目され、世界基準のアワードへ多数エントリーされる流れも生まれています。


・成功事例に共通するPoint of Purchase戦略

世界的な大手ブランドとしては、Appleの店内体験型ディスプレイやNikeのカスタマイズステーションがPOSだけでなくPOP全体を取り入れた成功事例として挙げられます(参照*2)。これらの企業は、視覚的演出だけでなく、顧客が実際に体験してブランド価値を感じられる仕組みを構築することで、購買意欲を高め、リピート購入へとつなげています。

一方で、小売チェーンのドン・キホーテのように、店内を一種のアミューズメント空間に仕立て上げるアプローチもPOP戦略の成功例として注目されます。カラフルなPOPサインやスタッフの手書きメッセージなどは、「商品を見つける楽しさ」を演出し、計画外の購買を後押しします(参照*4)。このように、成功事例に共通するポイントは「体験型」「統一された世界観」「購買行動を刺激するデザイン要素」といえます。

おわりに

POP(Point of Purchase)広告の導入によって、店内での最終的な購買決定を強力に後押しできる可能性が高まります。ディスプレイのデザインから配置戦略まで、さまざまな観点で工夫を重ねるほど、売上だけでなくブランドイメージにも良い影響を及ぼします。

企業規模を問わず、POP広告への取り組みは大きな投資対効果を生むことがわかっています。消費者の視点に立ちながら、改善と工夫を重ねる姿勢が、POP広告を最大限に活かすカギです。


・参照


〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。


▼この記事をSNSでシェアする

関連記事


【運用元】マーケティングWeek

マーケティングWeekとは?
マーケティングに関する製品・サービスが一堂に出展する専門展。販促、Web・SNS活用、営業支援、広告メディア、CS・顧客育成、データ分析、EC支援、マーケター採用・育成支援など、幅広い領域のマーケティング関連企業と、課題を抱えるユーザーが出会う場を提供しています。

マーケティングWeekについて詳しく見る>>

出展をご希望の方
出展料金、空き状況 を知りたい

来場をご希望の方