成功事例から読み解くUGCマーケティングの秘訣とは?
はじめに
マーケティングの現場では、企業自身が発信する情報の信頼性が相対的に低下していると指摘されています。こうした状況下で注目を集めているのが、消費者や利用者が主体的に作り上げるUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。
従来型の広告と比較して、UGCは生活者のリアルな声や体験が伝わるため、ブランドメッセージへの共感を得やすい傾向があります。本記事では、UGCマーケティングの全体像と成功のポイントを整理し、具体的な事例やデータを交えて、その効果や実践上の注意点を考察します。
●目次
UGCとは何か
・UGCの基本定義
UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、企業やブランドではなく、消費者やユーザー自身が主体となって作り出すコンテンツを指します。レビュー、写真、動画、コメントなどが含まれ、投稿者自身の実体験に基づく真実味が特徴です。ソーシャルメディア上で自然に拡散されるため、企業にとっても重要な情報源となります。こうした視点が信頼性を高め、広告の代替策としてUGCの活用が広がっています(参照*1)。
ソーシャルメディアマーケティングの研究では、UGCはeWOM(電子的な口コミ)としても機能し、ブランドと消費者の間に双方向のコミュニケーションを生み出す役割を担っています(参照*2)。さまざまな業種や製品でUGCが活用され、企業は利用者の声を新商品開発やサービス改善に活かす動きも増えています。
・UGCの種類と生成主体
UGCには金銭的な動機に基づかない自然発生的な投稿と、報酬を受けて制作されるケースの両方が存在し(参照*3)、テキストによるレビュー、写真、動画、音声コンテンツ、ライブ配信など多様な形式があります。生成主体も幅広く、一般消費者、インフルエンサー、趣味で投稿するユーザー、ブランドへの深い愛着を持つファンコミュニティなどが含まれます。
実際に商品を試した動画や、利用者が撮影した写真の共有は、企業制作のコンテンツとは異なる視点や魅力を引き出します。リアルな視点が説得力を持ち、潜在顧客に親近感を与えやすくなります。趣味性や個人の表現が反映されることで、SNSやコミュニティ内での話題拡散力も高まり、世界中でエンゲージメントやコンバージョン向上に寄与しています(参照*4)。
・マーケティングにおけるUGCの位置づけ
マーケティングの観点では、UGCは広告費を抑えつつ消費者の信頼を獲得できる有力な手段とされています。ユーザー同士が共感や会話を交わすことで、ブランドメッセージが自然に拡張し、ソーシャルリスニングによる市場調査にも活用されます。
Nielsenの調査では、消費者の92%が友人や家族からの勧めを広告より信頼すると報告されています(参照*5)。このような背景から、UGCは企業が一方的に発信するプロモーションでは得にくい共感や信頼をもたらす可能性が高いです。
一方で、UGCの自然発生的・自発的な特性は、適切に管理しないとブランドイメージを損なうリスクもあります。マーケティング戦略でUGCを活用する際は、企業の方針とユーザーの自発性のバランスを丁寧に管理し、双方にとって有益な関係を築くことが重要です。
UGCのメリット
・信頼性と本物らしさの向上
UGCの最大の利点は、本物らしさを通じた高い信頼性です。企業制作の広告は自社の利害を反映するため、情報の信頼度に疑問を抱く消費者も少なくありません。対して、実際のユーザーがリアルな使用感や意見を共有するUGCは、従来の広告よりも説得力を持つ傾向があります。Nostoの調査によると、87%の消費者がリアルな体験に基づく情報を重視しています(参照*1)。
消費者視点の声が組み込まれることで、製品の良し悪しだけでなく、使用シーンや実際の付加価値が伝わりやすくなります。ブランド側も自社コンテンツでは得にくい細やかな情報を知る機会となり、製品改良やサービス設計に活かすことができます。消費者が疑問を抱いたり、魅力を再発見したりする過程そのものが、新たな購入意欲やファン化につながることもあります。
・エンゲージメントとリーチの拡大
UGCはコミュニティ内の会話を活性化し、エンゲージメント向上に寄与します。ユーザーは自らが作成・発見したコンテンツを共有し合い、それが拡散されることで自然にリーチが拡大します。特に動画UGCは共有されやすく、ある調査ではブランド作成動画より10倍もシェアされやすいと報告されています(参照*6)。
消費者同士のやりとりを促しながら商品やサービスを広める点で、UGCは高い効果を発揮します。たとえばハッシュタグを使った投稿集約や、SNS上での投票・クイズなどの参加型施策が見られます。
・費用対効果とコンテンツ供給
UGCのもう一つの強みは、企業側のコンテンツ制作コストを抑えつつ、多様な素材を継続的に確保できる点です。自社で撮影や編集を行わなくても、ユーザーが生み出す投稿を許諾のもとで二次利用できる場合があります。結果的に広告予算を大幅に削減しながら、魅力的なビジュアルやストーリーを提示できます。
動画マーケティングでは制作コストの高さが課題となることもありますが、UGCを活用することでこの部分を補う企業が増えています。実際、ユーザー生成コンテンツの活用で動画制作費の削減が可能だと回答したマーケターは36%に上るとされています(参照*6)。
・ブランドロイヤルティとコミュニティ形成
UGCは顧客同士のつながりを促し、ブランドを中心としたコミュニティ形成を支援します。商品利用者が交流することで、企業提供以上の価値や情報が生まれる場合があります。
ファンや顧客が自発的に投稿を続ける環境が整えば、愛着を持つ利用者がブランドの魅力を他者に伝える役割を果たします。既存顧客がマーケティングのパートナーとして機能する状態となり、新たな参加者もコミュニティを通じて製品やサービスを認知しやすくなるため、好循環が生まれます。
UGCの作成と管理
・UGC創出の設計とキャンペーン施策
UGCを戦略的に活用するには、求めるコンテンツの方向性を明確にし、ユーザーが投稿しやすい仕組みを整えることが重要です。具体的にはハッシュタグキャンペーンや投稿テーマの設定、ウェブやアプリ上でのアクション誘導などが有効です。投稿を促す施策として、特定ハッシュタグを用いた写真コンテストやSNS上での投票企画などが挙げられます(参照*1)。
インセンティブ設計も効果的です。優れた投稿を表彰したり、商品サンプルや限定特典を提供することで参加意欲を高められます。
・権利許諾とクレジット表記
UGC活用においては、原作者への敬意と法的整合性が不可欠です。写真や動画の著作権は、SNS上に投稿されていても投稿者が所有している場合が多いです。利用規約に基づきプラットフォームが一定の使用権を得るケースはありますが、企業が自由に活用できるとは限りません。プラットフォームは非独占的なライセンスとして投稿コンテンツを扱うことが一般的で、投稿者の所有権そのものが移転するわけではありません(参照*7)。
企業がUGCを二次利用する際は、事前に投稿者から許諾を得ることが望ましいです。ソーシャルメディアで直接やりとりして許可を求めたり、参加規約を提示して包括的に同意を得たりするなど、透明性の高い手続きが求められます。投稿者へSNS上で直接問い合わせる手続きは、UGC使用許可を明確化するうえでも有効です(参照*8)。
・モデレーションとブランド整合性
UGCは自由度が高い反面、ブランドイメージとかけ離れた投稿や不適切な内容が混ざるリスクもあります。そのため、定期的にコンテンツをチェックし、企業の目指す方向に即しているかを確認するモデレーションプロセスが必要です。ブランドガイドラインの提示や参加時のルール設定などにより、不要な混乱を回避できます。動画品質や内容がブランドの世界観と合致しているかの判断も、企業価値の維持に直結します(参照*6)。
・成果測定と継続的改善
UGCキャンペーンを一過性のイベントで終わらせないためには、成果測定が不可欠です。SNS上でのいいね数やコメント数だけでなく、実際の購入数や問い合わせ件数、ウェブサイトへの誘導など、定量的な指標を組み合わせて効果を判断します。分析にはソーシャルメディア管理ツールやコンテンツアグリゲーションツールが活用され、UGCの効率的な収集と評価が可能です。inbeat.agencyの資料では、目標設定や明確なCTA、クロスプラットフォーム展開などがUGC成功の要因として挙げられています(参照*9)。
事例紹介
・グローバルブランドの動画UGC事例
世界的なブランドは、積極的に動画UGCを取り入れて成果を上げています。GoProはハッシュタグ「#GoPro」を通じてユーザーが撮影した冒険動画を収集し、YouTubeやSNSで拡散する施策を実施しました(参照*1)。高画質なアクション映像が話題となり、ブランド認知と売上の双方を伸ばした事例です。
Starbucksは白いカップにイラストを描いてSNSに投稿してもらうキャンペーンを展開し、多くの話題を集めました(参照*10)。Airbnbは旅行者の写真や体験談を特定ハッシュタグで収集し、多様な宿泊体験の魅力を利用者の目線で表現しています(参照*11)。利用者が自発的に伝えるストーリーは宣伝色が薄く、信頼性や共感を引き出しやすい点が共通しています。
・ソーシャルメディアキャンペーン事例
・日本企業・研究からの示唆
日本企業でも、UGC(ユーザー投稿)や顧客の声を、商品企画・改良の入力として扱う取り組みが公開されています。
資生堂は「メイクの上から日焼け止めを塗り直せない」などの声を踏まえた商品として、ブラシ一体型のUVパウダーを発売したと説明しています。また「チューブ容器の開封方法がわかりにくい」という声を受け、パッケージ表示を刷新した例も挙げています(参照*14)。
良品計画(無印良品)も、IDEA PARKを「お客さまの声を商品開発や改善に生かす」場として位置づけ、寄せられた意見や要望を新商品の開発や既存商品の改良につなげる運用を記載しています(参照*15)。
SNS上のUGCを直接扱う動きとしては、ソーシャルリスニングやソーシャルデータ分析の導入事例が出ています。森永乳業は、SNSの投稿・会話から顧客の「生の反応」やトレンドを捉える必要性を背景に、SNSの声を分析できる基盤を整えた経緯を記しています(参照*16)。化粧品領域でも、スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニーが、商品リニューアルや商品改良の文脈でソーシャルデータを活用する事例が公開されています(参照*17)。
おわりに
UGCは、マーケティング戦略の新たな可能性を切り開く重要な要素として注目されています。従来の広告手法だけでは伝えきれない商品やサービスの魅力を、生活者のリアルな声を通じて伝えることで、説得力の高い情報発信が可能となります。
一方で、成功には綿密なプランニングとモデレーションが求められます。多様な手法や事例を参考に、自社のマーケティング施策に適したUGC活用を検討することが、今後の成果向上につながるでしょう。
・参照
- (*1)American Marketing Association – UGC Content 101: A Comprehensive Introduction
- (*2)J-STAGE – ソーシャルメディアマーケティング研究の現状と今後の方向性
- (*3)IZEA Worldwide, Inc – What is the Difference Between UGC and CGC?
- (*4)Social Media Marketing & Management Dashboard – Complete guide to user-generated content (UGC) in 2025
- (*5)California Management Review – Is User-Generated Content (UGC) a double edged sword for Marketers?
- (*6)Wyzowl – The Power of User-Generated Content in Video Marketing
- (*7)User-Generated Content
- (*8)How to Feature User-Generated Content on Social Media
- (*9)50 UGC Statistics + Strategic Implications for Your Brand in 2025
- (*10)creativelive – Starbucks Encourages Creativity with White Cup Contest
- (*11)Airbnb – 地域の文化と歴史
- (*12)Blog – How to Turn Likes Into Loyalty: Capturing Gen Z’s Attention on Social Media
- (*13)Business Insider - Duolingo's CEO highlighted this year's swarm of green owl Halloween costumes
- (*14)資生堂 - お客さまの声を反映する仕組みづくり
- (*15)株式会社良品計画 - お客さまの声
- (*16)【公式】Brandwatch - ソーシャルアナリティクス – 森永乳業
- (*17)【公式】Brandwatch - ソーシャルアナリティクス – 株式会社スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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