成約率向上の鍵となるマーケティングファネルとは?
はじめに
マーケティングファネルは、認知から購入までのプロセスを体系的に整理し、各段階で最適な施策を設計するための基本的な枠組みです。
企業が成長を目指すうえで、多くの顧客候補がどのように製品やサービスを知り、比較検討し、実際に購入を決断するかを理解することは欠かせません。本記事では、その重要な手がかりとなるマーケティングファネルに焦点を当てます。
●目次
マーケティングファネルの基本概念
・マーケティングファネルの定義
マーケティングファネルとは、まだ商品やサービスを認知していない層から、実際に購入に至る層までの流れを可視化したフレームワークです。
認知段階にいる人数は多いものの、
認知
↓
興味・関心
↓
比較・検討
↓
行動(購入)
と段階が進むにつれ離脱が生じて絞り込まれるため、一般的に逆三角形の形状、つまり漏斗の形状に例えられます(参照*1)。
このファネル構造は、企業側にとって顧客の心理や情報収集経路を把握する指針となります。たとえば、認知を広げる施策と購買を後押しする施策は大きく異なるため、それぞれの段階で顧客がどのような情報を必要とするのかを整理する役割を担います。
・代表的なステージ構成
マーケティングファネルのステージは、認知(Awareness)から始まり、興味・関心(Interest)、比較・検討(Decision)、そして最終的な行動(Action)へ進むのが典型例です(参照*2)。AIDAモデル(認知・興味・欲望・行動)とも類似します。
また、比較・検討の段階から離脱しそうな顧客をフォローするには、購入前に無料体験や導入事例を提供するなど、段階に合わせた説得材料が必要です。
認知段階の顧客に大幅な価格訴求だけを行っても興味を抱いてもらえる可能性は低く、各ステージで必要なコンテンツを的確に判別し、提供する視点が求められます。
・マーケティングファネルの種類
ファネルにはいくつかの種類があります。代表的なものとして、以下が挙げられます。
【パーチェス(購買)ファネル】
認知 → 興味・関心 → 比較・検討 → 購入
パーチェスファネルは、購買プロセスを段階的に可視化して最適化を図ります(参照*1)。
【インフルエンスファネル】
継続 → 好意・愛着 → 共有・紹介 → 発信
インフルエンスファネルは購入後の顧客行動に着目し、継続的な利用やブランドへの肯定、さらには積極的な紹介・推奨までを促進する点が特徴です(参照*3)。
【ダブルファネル】
プロモーション → アクイジション → リテンション → インフルエンス
ダブルファネルは、パーチェスファネル(認知→購入)とインフルエンスファネル(継続→発信)を連続した1つの流れとして扱い、「購入に至るまで」と「購入後の育成・推奨」を同じ設計図の中で最適化する考え方です(参照*4)。
BtoBでは、上側(獲得側)はマーケティングと営業が主軸になり、下側(継続・推奨側)はインサイドセールスやカスタマーサクセスが主軸になる、という役割分担で整理できます(参照*3)。運用上は、たとえば「プロモーション→アクイジション→リテンション→インフルエンス」のように、購入前から購入後までを段階で区切ってKPIをつなぐと、部門ごとの施策が分断されにくくなります(参照*4)。
・マーケティングファネル活用のメリット
ToB領域におけるマーケティングファネル
・BtoB購買プロセスの特徴
BtoBの購買プロセスは、個人の嗜好や気分のみで決まるわけではありません。複数の部門や決裁者が関与するため、じっくりと情報を集める傾向が強く、一度の折衝で決まるケースは少ないといわれています(参照*1)。
さらにBtoB取引では、導入後の成果や費用対効果がより重視されるため、判断材料となる具体的事例やROI(投資対効果)がしばしば必要です。結果として購買リードが長くなりやすいため、ファネル構造を把握し段階的な情報提供を行うことで、見込み客を継続的に育成しやすくなるのが特徴です。
・BtoB向けマーケティングファネル設計
BtoB領域では、認知・関心・比較検討・購買の4ステージを設定したファネル設計が基本となります(参照*3)。ただし、BtoB取引は導入手順や契約フローが複雑化することが多く、商談数や提案資料、導入事例の提示など、オフライン要素も並行して進む点に留意が必要です。
ファネル上部の認知段階で重要なのはターゲット設定と事業戦略の明確化です。特定の業種や企業規模をピンポイントで狙う場合、専門メディアや展示会、Web広告のキーワード設計などもより具体的に行うと効果的です。
ファネル中部以降では、比較検討をスムーズにするためのFAQや無料トライアル、事例紹介などを最適なタイミングで提示することが求められます(参照*7)。
・フェーズ別施策と情報提供設計
認知フェーズではオンライン広告やオウンドメディア、業界イベントなどが挙げられます。まだ製品導入を検討していない段階から接点をつくることで、潜在顧客を引き上げるのが狙いです(参照*1)。興味・関心フェーズに進んだら、ホワイトペーパーやウェビナー、事例集などで詳細情報を提供し、顧客が抱える課題に対し具体的な解決策を示します。
比較・検討の段階まで来た顧客に対しては、ROIや生産性向上のデータを示すなど、より踏み込んだコンテンツを提供し、導入メリットを数値的に裏付けることが効果的です。最後の意思決定段階では、個別相談や試用版の導入支援など、導入直前の不安を取り除く施策が必要とされます。
・営業組織との連携とデータ活用
BtoBの獲得では、マーケティングが見込み客と最初に接点を持ち、営業が商談化・受注へ進める分業になりやすいです。この分業は機能しますが、両部門の足並みがそろわないと、顧客の検討スピードに合わせた提案が難しくなります。部門間の連携が欠けると、顧客対応の迅速な適応が難しくなる、という指摘もあります(参照*8)。
ToC領域におけるマーケティングファネル
・BtoC購買行動の特徴
BtoCの世界では、消費者の購買行動がデジタル化やSNSの普及によって多面的・非線形化しています。複数のチャネルを自由に行き来しながら情報を得るため、従来の直線的なファネルだけでは捉えきれないケースも増えています(参照*9)。
BtoC購買の特徴としては、個人の欲求やインスピレーションによる衝動的な興味の高まりと、価格・品質・口コミなどによる綿密な検討が混在する点が挙げられます。
・オンラインとオフラインの接点設計
BtoCの場合、オンライン経由と実店舗などのオフライン経由で顧客が獲得する情報の性質が異なります。オンラインではウェブサイトやSNS、検索エンジンでの口コミやランキングを多く参照し、オフラインでは店舗スタッフの説明や体験型イベントなどから購買意欲を高めることが一般的です(参照*6)。
どちらか一方に偏ったアプローチでは顧客にリーチし損ねる可能性があります。オンラインでは広告やSNSによる認知拡大と商品レビューの充実を図りつつ、オフライン側では展示や試飲・試着会、クーポンやポイントカードなどが購入前の最後の後押しになることもあります。この2つを連動させるため、店舗向けメルマガやQRコードなどを用いてオンラインへ誘導し、そこから詳細情報や他の製品群へ引き込む工夫がポイントです。
・eコマースにおけるマーケティングファネル
eコマースのファネルでは、ウェブ上での認知獲得から最終的な購入ボタンのクリックまでが一続きの旅路として捉えられます。ブランドサイトに訪れた見込み客の離脱要因を特定し、フォームの分かりやすさやFAQの充実度を最適化することが、コンバージョン率向上につながります(参照*10)。
購買までのプロセスがオンラインで完結する特性上、トラフィック分析やヒートマップなどを用いて顧客の行動パターンを追跡することが容易です。認知段階での広告やSNS誘導から、検討段階での商品レビューやサンプル動画、購入直前の送料無料やクーポン提示まで、一連の流れを可視化し、最適なタイミングでアプローチします。
また、eコマースでは購買後のロイヤルティ施策も成果に直結します。たとえば、Yotpoの調査によると、アメリカの平均的なeコマースのコンバージョン率は約2.5%〜3%であり、購入者の61%がユーザー生成コンテンツ(UGC)に影響を受け、80%が新ブランド購入時に5件以上のレビューを読む傾向があります(参照*10)。
・購買後フェーズとロイヤルティ向上施策
一度購入してもらった後が、ロイヤルティ構築のスタートとなります。定期購買やポイントシステム、会員限定キャンペーンといった施策を活用しつつ、顧客が満足できる利用体験を届けることで継続利用と再購入を促します(参照*11)。
この段階を疎かにしてしまうと、新商品の案内を見逃されたり、再購入のタイミングを逸してしまったりするリスクがあります。購買後のカスタマーサポートやコミュニティ形成を強化し、購入者に向けた追加情報や活用事例をこまめに提供することが、長期的な信頼関係づくりにつながります。
デジタル時代のマーケティングファネル
・デジタルマーケティングファネルの特徴
デジタル時代のマーケティングファネルは、顧客の属性やオンライン行動を細分化し、各段階でアプローチを変化させる点が特徴です。従来型の一方向のファネルと異なり、SNSや検索エンジン、デジタル広告など、顧客が最初に接触するチャネルが多岐にわたるため、より複雑なルートを想定して設計する必要があります(参照*3)。
デジタルファネルを成功させるには、パーソナライズされたコンテンツ提供やターゲット設定の精度向上がカギとなります。たとえばSaaS系サービスでは、無料トライアルからスタートして徐々にアップグレードを促すなど、ファネルの各ステージに応じた具体的な働きかけがポイントです。
・非線形カスタマージャーニーとファネル再設計
今日では、顧客は動画プラットフォームを視聴した後にSNSで口コミを確認し、また検索エンジンで他社比較を行うなど、一定の順番に沿わないプロセスをたどりがちです。ファネルに当てはめようとすると、複数のステージが同時に進行する複雑な形になることもあります(参照*9)。
そのため、一律に上から下へと集客施策を進めるのではなく、個々の顧客行動に合わせて接点を調整することが求められます。非線形のカスタマージャーニーを想定したファネルでは、マイクロモーメントごとのアプローチや複数チャネルの連動が重要になり、従来の直線的なモデルを再設計する動きが広がっています。
・AI活用とマーケティングファネル最適化
近年ではAI(人工知能)技術への投資が加速し、ソーシャルプラットフォームを中心にパーソナライズされたコンテンツ推薦や広告配信が高度化しています。Deloitteの調査によると、Z世代やミレニアル世代の過半数がストリーミングサービスよりもソーシャルメディアからの映像コンテンツ推薦を好み、広告についても「ソーシャルメディアの広告の方が自分に関連性が高い」と回答しています(参照*12)。
・指標設計と継続的改善プロセス
デジタルマーケティングファネルは分析が容易な半面、複数の指標を正しく設定しなければ、成果を見誤るリスクがあります。獲得コスト(CPA)や顧客生涯価値(LTV)、転換率などの指標を段階ごとに追い、チャネル別の目標転換を明確にすることが重要です(参照*6)。
さらに、数値データとあわせて定性データを収集・分析することで、なぜユーザーがその行動をとるのか、どのページやコンテンツでつまずくのかといった背景を把握できます。
おわりに
マーケティングファネルは顧客の購買プロセスを整理するうえで、企業にとって欠かせないフレームワークです。BtoB、BtoCのいずれの場合でも、段階的な施策を組むことで効率的にリードを育てられ、最終的な購入率を高める効果が期待できます。また、デジタル化が進む現代ではファネルがより複雑化し、多数のチャネルを横断する顧客を視野に入れた設計が求められます。
・参照
- (*1)マーケティングファネルとは?効果的な活用方法とフェーズ別の施策例を解説
- (*2)Backlinko – What Is a Marketing Funnel? Complete Beginner’s Guide
- (*3)顧客接点DXソリューション – 電通総研 – デジタルマーケティングファネルの基本┃種類や作成手順を解説(Vol-106) | ブログ
- (*4)Salesforce Home JP – 【図解】ファネルとは?意味や種類、活用方法、分析の始め方を解説
- (*5)Semrush Blog – The Marketing Funnel: What It Is & How It Works
- (*6)The Marketing Funnel: Stages, Strategies, & How to Optimize
- (*7)ウェブ解析士ナレッジ – 【初心者必見】集客とマーケティングの全体像と手順
- (*8)Harvard Business Review – Are Your Marketing and Sales Teams on the Same Page?
- (*9)BCG Global – It’s Time for Marketers to Move Beyond the Linear Funnel
- (*10)Yotpo – eCommerce Marketing Funnel: Stages, Examples, and Case Studies
- (*11)プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES –【開催レポート】LDXP主催【LINE活用トレンド徹底攻略 in 岩手】「マーケティング事例研究会Vol.2」 を開催
- (*12)Deloitte Insights – 2025 Digital Media Trends: Social platforms are becoming a dominant force in media and entertainment
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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