マーケティング戦略を設計し、施策同士の整合性を取って効果を最大化する方法。
はじめに
広告や交流サイトの運営、展示会の開催、メール連絡まで、幅広く行っているのに、成果が出ない。こうした状態は、施策の良し悪し以前に「戦略の設計」が不足していることが原因かもしれません。
この記事では、マーケティング戦略を設計し、施策同士の整合性を取って効果を最大化するために
・マーケティング”戦略”と”戦術”の違い
・マーケティングが噛み合わない典型パターン
・戦略設計を進める上での基本プロセス
・実務で使う設計物
を、解説します。
●目次
マーケティング戦略設計とは何か
・”戦略”と”戦術”の違い
マーケティング戦略とは、マーケティングにおける最も大きな方針です。広告などの個別施策ではなく、顧客に価値が一貫して届き、購入から継続、口コミの投稿まで自然に起きるような価値供給の流れを全体設計することです(参照*1)。
一方の戦術は、戦略を実行するための「具体的な手段」です。たとえば、検索広告を出す、動画を作る、記事を増やす、展示会に出るなどの手段が戦術に当たります(参照*2)。
ここを混同すると、目的と手段を混同したまま施策を進めることになります。たとえば、広告や投稿を増やすし、問い合わせの数は増えたが、受注の増加には至らないといったことが起きます。戦略は向かうべき目標を明確にする全体の設計図であり、戦術はその設計図に沿って選び・組み合わせ・改善するための具体的な手段であることを、抑えておきましょう。
・戦略設計が扱う範囲と、設計時のアウトプット
・事業戦略・プロダクト戦略・営業戦略との関係
施策が噛み合わないときに起きている典型パターン
・価値提案・ポジショニングが言語化できていない
・ターゲットが曖昧で全施策がバラバラに
・提供価値とチャネルがズレている
次に多いのが、提供価値と顧客とのコミュニケーションが合っていないパターンです。ここでいうチャネルは、広告、検索、交流サイト、店舗、代理店、展示会など「顧客と出会う場所」を指します。たとえば、購入までの意思決定を短くすべき商品なのに説明が長すぎる、といったズレが、購買を阻害します(参照*10)。
ハーバード・ビジネス・スクール・オンラインによると、企業が情報を届ける経路は 「広告」「自社発信(サイトやSNSなど)」「第三者の評判(口コミやニュース記事など)」 の3つです。この観点から整理すると、価値の伝え方がズレていないか点検しやすくなります。たとえば、購入前の知ってもらう段階では広告で接点を作ることが、比較検討の段階では自社サイトや口コミが重要になります(参照*11)。
・KPIが目的化し部門間で指標がバラバラになる
・顧客データが分断している
マーケティング戦略を設計する基本プロセス
・目的と成果指標を決める
まず、売り上げや受注件数といった最終的な数値目標を明確にします。そして、その成果に直結する「提供価値」と「立ち位置」を一文で定義することが重要です(参照*6)。
中間目標となるKPIを設定する際は、成果から逆算して行いましょう。たとえば、売上を最終目標にする場合、
・売上=商談数×受注率×平均単価
のように分解し、因果関係を明らかにします。そして、中間目標であるKPI自体が目的化することを防ぐために、目的との関係を定期的に点検します。
・環境分析で前提を確認する
・STPで誰に何を届けるかを決める
そして、STPで「誰に」「どんな立ち位置で」届けるかを決めます。STPは、市場を分ける(Segmentation)、ターゲットを決める(Targeting)、自社がとるべき位置づけを決める(Positioning)、という流れのことです。ここが決まると、広告の言葉、記事のテーマ、営業の提案の切り口がそろいます(参照*19)。
重要なのは、ターゲットを、困りごとの内容で絞り込むことです。たとえば、同じ業界でも、導入を急ぐ会社と慎重な会社では、必要な情報が違います。
また、「言いたいこと」よりも「相手が選ぶ理由」に合わせる必要があります。価格か、品質か、サポートか、顧客が商品やサービスを購入する理由を分析しましょう(参照*20)。
・4Pで施策の整合性を取る
・実行計画と検証方法の設計
戦略設計を実務に落とすためのフレームと設計物
・ポジショニングステートメントで提案する価値を固定する
ポジショニングステートメントは、狙う相手と、競合の中でどんな存在として覚えられたいかを短く示す言葉です。
・ターゲット
・カテゴリ(比較対象)
・強み(差別化点)と根拠
を盛り込みます(参照*22)。広告コピーのように短くする必要はありません。提供すべき価値を明確にできるように、詳細を書きましょう。この一文があると、広告コピー、記事テーマ、営業提案を一貫して設計することができます。
・ジャーニーマップで顧客との接点と顧客体験を確認する
・メッセージングとチャネル選定で提供する価値と伝える方法を揃える
メッセージングは、ターゲットの困りごと、約束する価値、根拠となる事実・実績を短い文章で統一し、部署や媒体で共通して伝えるべき提供価値を示すものです。そして、チャネル選定は、どこで出会い、どこで理解してもらい、どこで背中を押すかを決める作業です。商品との接点ごとにメッセージが違うと、顧客は同じ商品の話だと結びつけにくくなり、不信感にもつながります(参照*25)(参照*26)。
重要なのは、商品やサービスに合う方法で宣伝することです。たとえば、動画は短時間で雰囲気や使い方を伝えやすく、交流サイトの広告は興味関心に応じて広く届けやすいです。自社の価値が文章で伝わるのか、体験で伝わるのか、比較表で伝わるのかを基準に、チャネルと表現をセットで運用しましょう(参照*26)。
・KPIツリーと検証サイクルの作り方
・RACI表を用いて実行体制のチェックを行う
戦略を実行に移すには、役割と意思決定の整理が欠かせません。整理が曖昧なままだと、プロジェクトが進み関係者が増えるにつれて、確認が連鎖し、判断が遅れ、効率を下げることがあります。
RACI表とは、各タスクの「実行する人(Responsible)」「最終責任者(Accountable)」「相談先(Consulted)」「共有先(Informed)」を明確にするものです(参照*29)。
表による視覚化を通して線引きを明確にすると、意思決定が早くなり、業務内容も必要十分に遂行することができます。結果として、会議や確認作業が減り、担当者が自信をもって動けるようになり、全体の進行が安定します。
おわりに
マーケティング戦略設計は、施策を増やす前に、誰に何をどう届け、どう測るかを一貫させる作業です。戦略と戦術を分け、STPで狙いを定め、4Pで仕組みを整えると、施策同士が同じ方向を向きます。
施策が噛み合わないと感じたら、提案する価値やターゲットの曖昧さ、チャネルとのズレ、KPIや顧客データなどの指標が適切かどうかを点検しましょう。施策を行う際は、ポジションステートメントやジャーニーマップ、メッセージング、KPIツリー、RACI表などの設計物を活用しながら進めていきましょう。
ターゲット・価値・チャネル・指標における各施策の整合性を保つことが、マーケティング戦略設計の成果を左右します。
・参照
- (*1)マーケティング戦略の基本構造|事業フェーズ別の集客設計|KAL Inc.
- (*2)テクロ株式会社 – コンテンツマーケティング戦略の完全ガイド|成果を出すための9ステップと成功事例【2026年最新版】 | テクロ株式会社
- (*3)What is Agile marketing? Principles & Best Practices
- (*4)グロービス学び放題 – 企業のマーケティング機能: 経営理念との整合性は取れているか? | 20%OFFキャンペーン中 | GLOBIS学び放題×知見録
- (*5)第1回なぜ、今マーケティング機能の再構築か
- (*6)Principles of Marketing – H5P Edition – 2.1 The Value Proposition – Principles of Marketing – H5P Edition
- (*7)Open Learning – Personal branding for career success: Week 2: 4 | OpenLearn – Open University
- (*8)Principles of Marketing – 11.1 Integrated Marketing Communications (IMC) – Principles of Marketing
- (*9)Uism | ユーイズム株式会社の公式ホームページ – 「40代女性」だけじゃ、ユーザーの本音は見えない ― マーケットリサーチとUXリサーチの違いをジョブ理論で紐解く ― | Uism
- (*10)Marketing Principles From The River City – Chapter 9 – Distribution – Marketing Principles From The River City
- (*11)Business Insights Blog – Paid vs. Owned vs. Earned Media: What’s the Difference?
- (*12)PubMed Central (PMC) – “When a Measure Becomes a Target, It Ceases to be a Good Measure” – PMC
- (*13)Balanced Scorecard Theory
- (*14)Breaking Down Data Silos: What They Are & How to Eliminate Them
- (*15)How to demonstrate marketing impact on sales by eliminating data silos | EY – Global
- (*16)Smart Insights – SOSTAC marketing planning model guide | Smart Insights
- (*17)11.8 The Product Life Cycle – Introduction to Business | OpenStax
- (*18)PERSOL(パーソル)グループ – 営業戦略を立案するための6ステップと8つのフレームワークを解説 | 記事一覧 | 法人のお客さま | PERSOL(パーソル)グループ
- (*19)Smart Insights – STP marketing: The Segmentation, Targeting, Positioning model
- (*20)Nielsen Norman Group – Personas vs. Jobs-to-Be-Done – NN/G
- (*21)Corporate Finance Institute – Marketing Plan – Overview, Purpose, and Structure
- (*22)Developing Positioning Statements | Principles of Marketing
- (*23)Nielsen Norman Group – Journey Mapping 101 – NN/G
- (*24)Qualtrics – Customer Journey Mapping for Better Experiences
- (*25)13.3 Integrated Marketing Communications – Principles of Marketing | OpenStax
- (*26)Consistency in the Omnichannel Experience
- (*27)KPIツリーとは?【分解の仕方】作り方、KGI・KPIの具体例
- (*28)How to Measure Marketing Effectiveness: 6 Key Strategies for Success
- (*29)RACI Matrix: Responsibility Assignment Matrix Guide
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
▼この記事をSNSでシェアする
関連記事
【運用元】マーケティングWeek
マーケティングWeekとは?
マーケティングに関する製品・サービスが一堂に出展する専門展。販促、Web・SNS活用、営業支援、広告メディア、CS・顧客育成、データ分析、EC支援、マーケター採用・育成支援など、幅広い領域のマーケティング関連企業と、課題を抱えるユーザーが出会う場を提供しています。
マーケティングWeekについて詳しく見る>>
来場をご希望の方
