ファンダムマーケティングとは?ファンを資産化する戦略を解説
はじめに
ファンが自ら情報を拡散し、共感が購買行動につながる時代が訪れています。「推し」を応援するファンの力を活用するファンダムマーケティングは、認知から購買までのプロセスを一気に飛び越える可能性を持つ手法として、多くの企業が取り組みを始めています。
この記事では、ファンダムマーケティングの定義から、ファンを資産化する具体的な戦略設計、効果測定の方法まで、段階を追って押さえるべきポイントを整理していきます。
●目次
ファンダムマーケティングの定義と基本構造
・ファンダムマーケティングとは何か?
・ファンダムとファンの違い
「ファン」は特定の対象を個人的に好む人を指します。一方「ファンダム」は、共通の文脈・世界観・価値観を共有するコミュニティそのものを意味します。ファンダムの内部では、情報共有や二次創作、リアルイベントへの参加など多様な活動が行われており、単なる「好き」の集まりとは異なる集合的な力を持っています(参照*2)。
自社のターゲットがどの段階にいるのか、個人的な「好き」にとどまるのか、それともコミュニティとして活動しているのかを見極めることが、施策設計の出発点になります。
・従来のタイアップとの差異
従来のタイアップは、企業が伝えたいことをタレントやアーティストに発信してもらう、一方通行の告知型が主流でした。知名度が高いタレントを起用したリーチ重視のキャスティングや、ブランドとタレントの文脈に関連性がない企画、企業側の言いたいことだけを載せる進行がその典型です(参照*1)。
ファンダムマーケティングは、認知から興味、購買、愛着までを一連の体験として設計し、単方向の告知で終わらせないタイアップへの更新を目指します。短期の成果と中長期の資産形成を接続する点が根本的に異なります(参照*3)。
自社がこれまで行ってきたタイアップの構造を振り返り、一方通行で終わっていないかを確認するところから、見直しを始められます。
・ファンを資産化する背景と市場環境
ファンを資産化するという考え方は、推し活市場の拡大とファンダムエコノミーの浸透を背景に広がっています。ここでは、市場規模のデータと消費行動の変化を確認し、なぜ今ファンを資産化する動きが求められているのかを見ていきます。
・推し活市場の経済規模と消費傾向
矢野経済研究所の「『オタク市場』に関する調査(2024年)」によると、アニメ・アイドル・ゲームなどを含むオタク市場全体の規模は約9,423億円と推計されています。「オタク」と「推し活」は単純に置き換えられる概念ではありませんが、両者が重なる部分は多く、広い意味での推し活市場は9,000億円規模のポテンシャルがあると捉えられています(参照*2)。
推しの活動をSNSでチェックし、推しのグッズを買い、他企業とのコラボに足を運び、公演チケットに何口も応募するなど、推し活の経済活動は非常に活発です。マーケティングはファンという消費者集団の形成を目指すようになり、アーティストであれブランドであれ、ファンを囲い込み、注意を引きつけ、消費を促すことが要になっています(参照*4)。
9,000億円規模という数字を前提に、自社が参入しうるジャンルやファンダムの属性を洗い出してみると、資産化の対象を具体化しやすくなります。
・可処分精神とファンダムエコノミーの拡大
ファンダムマーケティングが中心に据える概念のひとつに「可処分精神」があります。これは「それなくしては生きていけない」「人生への活力」「癒し」「日々の最優先事項」として存在する、精神的な余白のことです。従来のタイアップやインフルエンサー施策を一方通行の告知で終わらせず、認知から購買、愛着までを一連の体験として設計し、短期の成果である「今日の売上」と中長期の資産形成である「明日の売上」を接続することが狙いとなります(参照*3)。
ファンダムエコノミーという概念が象徴するように、ファンの消費はモノだけにとどまりません。推しのSNS投稿を拡散し、コラボ商品を購入し、イベントに足を運ぶ一連の行動の全体が経済圏を形づくっています(参照*4)。
自社の施策が「今日の売上」だけで終わっていないか、中長期でファンとの関係を資産化する設計になっているかを点検することが、ファンダムエコノミーに参入する第一歩です。
ファンの資産化がもたらすメリットとリスク
ファンを資産化する取り組みは、売上とブランド価値を同時に高める可能性を持つ一方で、コミュニティ特有のリスクにも向き合う必要があります。ここではメリットとリスクの両面を確認します。
・売上とブランド価値の同時向上
ファンダムマーケティングは、従来のファネルに沿って段階的に施策を最適化するアプローチとは異なり、認知から購買までのファネルを一気に飛び越えていく力を持っています。潜在顧客の掘り起こしから比較検討のステップを経ずに、ファンの熱量がそのまま購買につながるのが特徴です(参照*5)。
全ジャンルを横断した調査では、「広告を視聴・聴取する」「商品やサービスをより意識し認知度が高まる」「商品やサービスに興味・関心が芽生える」といった反応が高い得点で確認されています。これはファンダムを活用した施策が広告効果を示していることを意味します(参照*6)。
ファネルのどの段階で効果が出ているかを自社の購買データや認知調査と突き合わせ、施策のどこがファネルの飛び越えに寄与しているかを特定する作業が有効です。
・コミュニティの暗い側面と対処法
ファンのコミュニティには、ポジティブな面だけでなく敵対的な行動が生まれるリスクがあります。日本の消費者310名を対象とした調査では、ブランドの消費者間コミュニティ意識がライバルブランドに対するトラッシュトーク(中傷的な発言)に寄与する経路が検討されました。その結果、ブランド間のライバル関係がトラッシュトークを直接駆動するわけではなく、消費者同士のライバル関係が重要な役割を果たすことが明らかになっています(参照*7)。
対処策として、競合他社との比較を強調せず、ブランドコミュニティの肯定的な側面を強化するキャンペーンが有効とされています。自己認識のポジティブな側面を促進するアプローチは、競合ブランドへのトラッシュトークを抑えつつ、ブランド愛着を高められます(参照*7)。
自社のSNS上で消費者同士の対立が起きていないかをモニタリングし、競合比較ではなく自ブランドの強みを発信する方針で運用することが重要です。
・ファンを資産化する戦略の全体像と手順
ファンを資産化するためには、企画設計からデータ基盤の整備、コンテンツの拡散までを一貫した手順で進める必要があります。ここでは3つの切り口から、実行のフローを順に見ていきます。
・ブランド×IP×ファンダムの三方良し設計
ファンを資産化する戦略の起点は「推される」状態を設計することにあります。広告だけに頼らず、ブランドとIP(知的財産)とファンダムの三者が利益を得る「三方良し」の構造を組み立てることが求められます。リサーチや企画の方法論を章立てとケースで整理し、再現できるかたちに落とし込む考え方が提示されています(参照*3)。
実行の入り口として、まず自社商品やサービスのなかでどのジャンルや属性がファンダムと重なるかを分析します。次に、対象となるファンダム固有のルールや文化をリサーチし、「その界隈で何が好まれるか」を把握します。そのうえでブランドとしての関わり方の指針を決めますが、主役はあくまで「推し」であり、企業は後ろで支える姿勢が基本です(参照*2)。
自社ブランドとファンダムの接点を書き出し、「三方良し」になっているかを企画段階で必ず検証する手順を組み込んでください。
・データ基盤とID統合による顧客理解
ファンを資産化するうえで、データ基盤の整備は欠かせません。各サービスサイトのIDを統合し、蓄積されたデータをもとに分析・可視化する基盤を整えることで、新規会員や既存ファンの動向を把握できるようになります。こうした基盤があることで、キャンペーンをそれぞれのファン層にフィットさせて実行でき、ファンダムマーケティングの土台を築いて活性化を図れます(参照*8)。
アルファ世代やZ世代では、ファンとブランドのあいだの双方向のやりとりが欠かせないと強調されています。話題を提供するために細かい設定や裏話を充実させ、ネットミームを活用することも、人気の再燃や新規ファンの獲得に効果的だとされています(参照*9)。
IDが分散している場合は、まず統合の優先順位をつけ、ファン層ごとの行動パターンを可視化するところから着手できます。
・コンテンツ設計からUGC拡散までの実行フロー
ファンダムに馴染む体験設計がコンテンツ制作の軸になります。「JTこころフルボイスキャンペーン」では、声優ファンダムから肯定的な反応が自然に生まれることを目標に設計が進められました。ファンダムに馴染みのある乙女ゲーム風の表現を軸にし、多くの人に楽しんでもらえるシチュエーションの選定と台本制作を一貫して担っています(参照*10)。
この事例が示すように、ファンダムの文化に合った表現をコンテンツに落とし込み、ファンが自発的に共有したくなる仕掛けをつくることが拡散の起点になります。企業が一方的にメッセージを押し出すのではなく、ファンが「推し」を語る文脈のなかにブランドが自然に存在する状態を目指す流れです。
企画段階でファンダムの反応を事前にシミュレーションし、台本やビジュアルの表現がファンの文化と整合しているかを確認する工程を設けてください。
ファンダムマーケティングの比較と選び方
ファンダムマーケティングと似た手法がいくつか存在します。それぞれの違いを理解し、自社の目的に合った選択をすることが大切です。
・インフルエンサーマーケティングとの判断基準
インフルエンサーマーケティングは、人気や知名度が高いアーティスト・タレントを起用したリーチ重視のキャスティングが中心です。ブランドとアーティストやタレントの文脈に関連性がない企画、ブランドのファンやタレントのファンを大事にしない企画、企業の伝えたいことだけを発信してもらう進行が典型的な進め方です。ファンダムマーケティングは、こうしたインフルエンサーマーケティングとは異なる手法として位置づけられています(参照*1)。
判断のポイントは、施策がリーチの最大化を目的とするのか、それともファンの熱量を活かして共感の連鎖を生むことを目的とするのかという点にあります。前者であればインフルエンサーの起用が合い、後者であればファンダムの文脈を尊重した体験設計が必要になります。
自社の施策目的を「到達範囲の拡大」と「共感の深化」のどちらに重きを置くかで分類し、それぞれの手法を使い分ける基準を社内で共有してください。
・ファンマーケティング・ファンファーミングとの位置づけ
従来のファンマーケティングは、既存ファンとの関係を中心に据えた手法です。ブランドイベントや会員限定施策などを通じてロイヤルティを高める一方で、「新しいファンをどう増やすか」「共感の輪をどう広げるか」という課題が残っていました。そこで登場した考え方がファンファーミングです(参照*11)。
ファンファーミングは「ファンを育む」という発想に立ち、潜在ファンと既存ファンの両方を対象にします。既存ファンとの関係を深める従来型に対して、ファンファーミングは発見から関係育成、ブランド成長へとつなぐ戦略プロセスを取り、ファン基盤の拡張とブランド成長の共創を目的としています(参照*11)。
自社が「既存ファンの深耕」「潜在ファンの開拓」「ファンダムの熱量活用」のどこに課題を抱えているかを整理し、ファンマーケティング・ファンファーミング・ファンダムマーケティングのどれが適合するかを見極めてください。
・失敗を防ぐための注意点と効果測定
ファンを資産化する施策は、ファン心理への配慮を欠くと逆効果になりかねません。ここでは世界観の毀損を防ぐ視点と、効果を測るための指標設計を確認します。
・世界観の毀損とファン心理への配慮
ファンダムマーケティングでは、世界観を壊さないことが大前提です。キャラクターのイメージに反する企画を避けること、推しを丁寧に扱いビジュアルの質や紹介文の表現に注意を払うこと、ファンの声をきちんと聞きSNSの反応に真摯に向き合うことが求められます。ファンは自分の推しを大切に扱ってくれる企業に対して、自然と親近感と信頼を抱きます(参照*2)。
企画のチェック段階で、「この施策はファンの聖域を侵していないか」を判断項目として設け、SNS上の反応を事前にテストする運用を組み込んでください。
・KGI・KPI設計と独自指標の活用
ファンダムマーケティングの効果測定では、KGIとKPIの設定に加え、独自指標の設計が提唱されています。独自指標の例として「初速度」「熱狂度」「越境度」などが挙げられており、ファンダム特有の反応を捉えるために通常の広告指標とは異なる物差しが必要です(参照*3)。
実際の検証方法としては、販促目的の場合は購買データで効果を確認し、ブランディング目的の場合はブランドリフト調査を行い、目的に合致する測定項目を設定したうえで判断します。これらに加えてSNS上の口コミの定量分析と定性分析も活用されます(参照*1)。
自社の施策目的が販促なのかブランディングなのかを先に明確にし、それぞれに合った測定方法と独自指標を組み合わせて設計してください。
おわりに
ファンダムマーケティングは、ファンが自ら動き共感を広げる力をブランドの資産に変える手法です。「三方良し」の企画設計、データ基盤の整備、世界観を守る配慮、そしてファンダム特有の指標による効果測定が、資産化を実現するための柱になります。
まずは自社ブランドとファンダムの接点を洗い出し、ファンの文化を尊重した体験設計から取り組んでみてください。短期の売上と中長期のファン資産をつなぐ視点が、これからの施策設計を変えていくはずです。
・参照
- (*1)株式会社トライバルメディアハウス – 売れて愛されるファンダムプロモーション|サービス|株式会社トライバルメディアハウス
- (*2)キクコト byジェイアール東日本企画 – ファンダムマーケティングでファンを動かす方法|“好き”は最大の経済力
- (*3)プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 「モノが売れない時代に認知の壁を突破し、興味喚起から購買まで突き抜ける」―推されるブランドへ導く新刊『ファンダムマーケティング』【9/12発売・予約受付中】 | 株式会社トライバルメディアハウスのプレスリリース
- (*4)三田評論 – 柳澤 田実:消費社会の宗教、ファンダム・カルチャー|特集|三田評論ONLINE
- (*5)The consumer decision journey|McKinsey and Company Home
- (*6)In an era where nearly half have a “favorite,” what perspectives are essential for advertising and marketing?
- (*7)Frontiers | Articles – Frontiers | The negative impact of a sense of community on consumers: focusing on trash talk
- (*8)グロースマーケティング支援|事例集|NTTドコモビジネス株式会社
- (*9)ジェトロ – 米ニューヨーク市で「Toy Fair 2026」開催、世界の玩具トレンドを反映(日本、米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
- (*10)プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – モダンエイジ、“声優ボイス×台本配布”によるJT認知&UGC創出のファンダムマーケティング施策を支援 | 株式会社トライバルメディアハウスのプレスリリース
- (*11)ファンダムの力をファンマーケティングに─企業ファンダムを育む新戦略とは|ビジネス課題を解決する情報ポータル|Do! Solutions
【このニュース記事はAIを利用して書かれています】
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
▼この記事をSNSでシェアする
関連記事
【運用元】マーケティングWeek
マーケティングWeekとは?
マーケティングに関する製品・サービスが一堂に出展する専門展。販促、Web・SNS活用、営業支援、広告メディア、CS・顧客育成、データ分析、EC支援、マーケター採用・育成支援など、幅広い領域のマーケティング関連企業と、課題を抱えるユーザーが出会う場を提供しています。
マーケティングWeekについて詳しく見る>>
来場をご希望の方
