コンバージョンAPI(CAPI)とは? 仕組み・メリット・導入方法を解説
はじめに
Cookie規制やブラウザのトラッキング防止機能が広がるなかで、広告の効果測定において「計測できないデータ」が増えています。こうした課題への対策として、自社サーバーから広告プラットフォームへ直接データを送るコンバージョンAPI(CAPI)の導入が進んでいます。
この記事では、コンバージョンAPIの仕組みを中心に、主要プラットフォームの対応状況やメリット・デメリット、導入手順まで解説します。
●目次
コンバージョンAPIとは?基本の定義と登場の背景
・コンバージョンAPI(CAPI)の定義
コンバージョンAPI(CAPI)とは、ユーザーがサイトやアプリ上で「購入」や「会員登録」などの行動をした際に、その情報を自社サーバーから広告プラットフォームへ直接送信する仕組みです。従来は「ピクセルタグ」と呼ばれる仕組みで、ブラウザを通じてユーザー行動を計測していました。しかしブラウザを介さない分、Cookieの制限やブラウザの設定に左右されずにデータを届けられる点が大きな特徴です(参照*1)。
サードパーティCookieを使わずにサーバー側からコンバージョンデータを送信できるため、ターゲティングやコンバージョン計測、広告の最適化といった領域でのパフォーマンス向上が期待できます(参照*2)。自社の広告運用では、どのプラットフォームにCAPIが対応しているかを確認し、計測環境の全体像を把握しておくことが第一歩となります。
・Cookie規制・ブラウザ制限による計測課題
Cookie規制やブラウザによるトラッキング防止機能の影響で、従来のピクセルタグでは取得できないデータが増加しています。AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)の影響で、iOSデバイスやSafari・Firefoxでは、サードパーティCookieを使った計測がほぼ不可能になっています。特にスマートフォンやタブレット経由での購入や登録が多い業種では、この状況への対策が不可欠だと指摘されています(参照*1)。
Cookieフリー時代に向けて、Cookieに依存しない正確なユーザー行動計測と、それに基づくマーケティング施策の最適化維持を可能にする計測基盤の提供が2021年から始まっています(参照*3)。自社のサイトでどの程度のトラフィックがSafariやFirefox経由で発生しているかを把握し、計測欠損のリスクを数字で確かめることが対策検討の出発点になります。
コンバージョンAPIの仕組み──データが届くまで
・従来のピクセルタグ計測のデータフロー
従来のピクセルタグ計測では、ウェブブラウザ上のコンテナが計測データを複数の収集サーバーへ送る形が一般的です。ユーザーがページを表示するたびに、ブラウザに埋め込まれたタグが動作し、広告プラットフォームのサーバーへデータを送信します(参照*4)。
しかし、ブラウザの読み込みエラーや広告ブロッカーの影響で、取得しきれなかったシグナルデータが発生するケースがあります(参照*2)。つまり、ブラウザだけに計測を頼る方法では、実際に起きたコンバージョンを取りこぼすリスクが存在します。現在のピクセルタグ計測で報告されるコンバージョン数と、実際の受注数や登録数との差を定期的に照合することが欠損の有無を見極める手がかりです。
・サーバー間通信によるデータ送信の流れ
コンバージョンAPIの仕組みの核となるのは、広告主のサーバーと広告プラットフォームのサーバー間で直接データを送信する点です。ブラウザを介さないため、データの欠損を防ぎ、広告の効果をより正確に把握できるようになります(参照*1)。
具体的には、ユーザーがサイト上で購入や登録などのアクションを完了すると、その情報が自社サーバーに記録されます。自社サーバーは、あらかじめ設定されたAPIの仕様に沿って、イベントの種類やユーザー情報を広告プラットフォームのサーバーへ送信します。この流れはサーバー対サーバー(S2S)の通信であるため、ブラウザの設定やCookieの有無に影響を受けません。
自社のサーバー環境で、どのイベントデータをどのプラットフォームに送るかを整理し、送信するパラメーターの設計を事前に行うことが導入準備の要です。
・サーバーサイドタグマネージャーの役割とクライアント処理
コンバージョンAPIの仕組みを運用するうえで、サーバーサイドタグマネージャーが重要な役割を果たします。サーバーは自社のGoogle Cloud Platformプロジェクト、もしくは選択した別の環境で動作し、データはサーバー内でのみアクセスできます。他の場所へ送るかどうかは運用者が決定でき、タグはサンドボックス化されたJavaScript技術を使って構築されます。権限によりタグの機能が可視化され、ポリシーでコンテナの動作範囲を設定できます(参照*4)。
データの中継役となる「クライアント」は、ユーザーのデバイス上のソフトウェアとサーバーコンテナとの間のアダプターです。クライアントはデバイスから計測データを受け取り、そのデータを1つ以上のイベントへと変換し、コンテナ内で処理されるようデータを振り分け、結果をリクエスト元へ返します。
この仕組みは、Dockerをサポートする任意のクラウドやサーバー提供者で動作するため、すべての企業が利用可能な構成になっています(参照*5)。自社のクラウド環境や運用体制に合わせて、サーバーコンテナの設置場所とクライアントの構成を検討してください
主要プラットフォーム別のコンバージョンAPI対応状況
・Meta広告のConversions APIとイベントマッチングクオリティ
Meta広告ではコンバージョンAPI(CAPI Gateway等の導入支援ツールも用意)が提供されています。Meta広告特有の指標として「イベントマッチングクオリティ(EMQ)」があります。EMQは、サーバーから送信された顧客情報が、イベントインスタンスとMetaアカウントのマッチングにおいてどれほど有効かを示すスコアで、10点満点で評価されます。EMQが高いほど、広告のアトリビューション分析とパフォーマンスが向上する可能性があります(参照*6)。
EMQは、コンバージョンAPI連携を通じてサーバーから受け取った顧客情報パラメーター、受け取った情報の品質、およびMetaアカウントとマッチしたイベントインスタンスの割合を考慮して算出されます。Meta広告の学習では「1週間に50件以上」のコンバージョンデータが学習の目安です(参照*1)。EMQスコアの推移を定期的に確認し、送信する顧客情報パラメーターの種類や品質を調整することがマッチング精度の維持につながります。
・Google広告・Yahoo!広告・TikTok Events APIの特徴
Google広告ではコンバージョンAPIに加え、アドバンスドマッチングに相当する「拡張コンバージョン」が提供されています。Google広告では非公式ながら「月に30件以上」のコンバージョンデータが学習の目安です。Yahoo!広告もコンバージョンAPIと詳細マッチングに対応しています(参照*1)。
Yahoo!のCAPIはCookieに依存しない識別子をサポートし、安全なプライバシープロトコルを活用することで、広告主がプラットフォームへ送信するデータを完全に管理できる設計です(参照*7)。TikTokのEvents APIは、広告主が保有するウェブサイト、アプリ、CRMデータ、オフラインデータなどのマーケティングデータをTikTokやPangleに直接共有できるサーバー間(S2S)の連携方法です(参照*2)。利用中のプラットフォームごとに、対応するAPI名称や補完機能を一覧で整理し、導入の優先順位を検討してください。
コンバージョンAPIのメリットとデメリット
・導入で得られる計測精度・広告最適化のメリット
コンバージョンAPIの導入で得られる大きなメリットは、計測精度の改善です。ブラウザの読み込みエラーや広告ブロッカーによって取得しきれなかったシグナルデータを補えるため、従来以上に広告最適化機能の活性化が期待できます(参照*2)。
計測改善の具体的な実績も報告されています。Google広告向けのServer-Side Taggingでは、サーバーアクセスログ単体で従来のWebコンバージョンタグに比べて捕捉できるコンバージョン数が6.1%改善しました。Meta広告のConversions API実装では、サーバーアクセスログ単体で平均15%、フォーム入力情報もあわせて実装することで平均29%の改善結果が得られています(参照*3)。導入前後でコンバージョン数の差分を比較し、改善幅を定量的に把握することが投資判断の材料になります。
・技術的負荷・コスト面のデメリット
一方で、コンバージョンAPIの導入や運用には一定以上の技術的知識とリソースが必要になります。サーバー環境の構築や、各プラットフォームごとのAPI仕様への対応、送信データの設計と保守といった作業が発生するためです(参照*1)。
ただし、複数の広告プラットフォームに対応した統合ソリューションも登場しており、専門エンジニアが社内にいない組織でも外部ツールや支援サービスを活用して導入のハードルを下げることが可能になっています。自社の開発体制と予算を照らし合わせたうえで、自前で構築するか外部サービスを利用するかを比較検討してください。
コンバージョンAPIとアドバンスドマッチングの違いと併用の意義
コンバージョンAPIとアドバンスドマッチングは役割が異なります。コンバージョンAPIは、サーバー経由でイベント全体を正確に送信する仕組みです。アドバンスドマッチングは、ユーザーが入力する情報を使ってマッチング精度を補完する仕組みです。コンバージョンAPIはより包括的な計測基盤であり、アドバンスドマッチングはブラウザベースの計測を強化する補完的な役割といえます(参照*1)。
両者は役割が異なるため、どちらか一方ではなく、両方を併用することで最大の効果を発揮します。特にiOSデバイスやSafari・Firefoxではサードパーティーに依存したCookie計測がほぼ機能しないため、コンバージョンAPIでサーバー側の計測を確保しつつ、アドバンスドマッチングでブラウザ側の精度を底上げする構成が有効です。
広告プラットフォームの機械学習は十分なコンバージョンデータの蓄積を必要とします。Meta広告では1週間に50件以上、Google広告でも非公式ながら月に30件以上が学習の目安です。この学習期間を早く確実に抜けることが、安定的なパフォーマンス向上の第一歩です。両方の仕組みを併用してデータ欠損を減らし、学習に必要なデータ量を確保できているかどうかを定期的に確認してください。
導入の進め方と注意点
・導入手順の全体フロー
コンバージョンAPIの導入は、事前整理フェーズからスタートします。具体的には以下のような作業を順に進めます。
- 現在掲載中の広告におけるCookie規制の影響度と事業への貢献度の整理
- ファーストパーティーデータの収集状況・取得内容の確認
- ツール、データ、タグ周りの利用・計測状況の整理
- プライバシーポリシーの整備状況の確認(個人データの利用目的や定義、ユーザーへの許諾・同意、第三者提供方法など)
事前整理のあとは、サーバーコンテナの設置とタグの設定に進みます。サーバーサイドGTMを初めて設定する場合、サーバーコンテナのURLを追加することで、全トラフィックがサーバーコンテナに送信されるようになります。データが引き続きGA4に送信されるようにするには、サーバーコンテナにGA4サーバーサイドタグを追加し、そのタグを全イベントで確実に起動させる必要があります(参照*8)。各ステップの作業範囲を洗い出し、担当者とスケジュールを決めてから着手してください。
・失敗を防ぐためのチェックポイント
導入時に見落としやすいポイントの1つが、パラメーター設定です。Meta広告のサーバーサイドGTM連携では、first_party_collectionフラグをtrueに設定する必要があります。user_dataパラメーターをサーバー側GTMに渡せるようにするために、この設定は必須です(参照*8)。
もう1つのポイントは、データのセキュリティとプライバシー保護です。計測基盤を広告主企業が保有するクラウド環境下で構築することを原則とし、企業が取得した個人情報などのデータをセキュアな環境で利活用できる設計にします。導入時には技術的なサポートだけでなく、ユーザーへの許諾取得なども含めた対応が求められます(参照*3)。テスト環境で送信データの内容と到達状況を検証し、本番反映前にプライバシーポリシーとの整合性を確認してください。
おわりに
コンバージョンAPIは、Cookie規制が進むなかで広告計測の正確性を維持するための仕組みです。サーバー間通信によるデータ送信の流れ、プラットフォームごとの対応状況、アドバンスドマッチングとの併用、そして導入手順と注意点が主なポイントでした。
まずは自社の計測環境でどの程度のデータ欠損が生じているかを確認し、優先度の高いプラットフォームから段階的にコンバージョンAPIの導入を進めることができます。
・参照
- (*1)Web担当者Forum – コンバージョンAPI・アドバンスドマッチングとは:AI時代の広告効果「CV計測の誤差」ゼロが鍵 | 杉原剛のデジタル・パースペクティブ | Web担当者Forum
- (*2)TikTok広告のEvents APIとは?広告パフォーマンスを向上させる実装の必要性を解説
- (*3)電通デジタル、Cookieに依存しない計測基盤「X-Stack Connect」 においてLINE、Twitter、TikTokとの連携を開始| 株式会社 電通デジタル
- (*4)Google for Developers – サーバーサイド タグ設定の概要 | Google Tag Manager – Server-side | Google for Developers
- (*5)Google – Bring performance and privacy together with Server-Side Tagging
- (*6)Dataset Quality API
- (*7)Standard Yahoo Conversion API
- (*8)サーバー側Googleタグマネージャ(GTM)用コンバージョンAPI
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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