ファーストパーティーデータとは?意味・活用方法・なぜ今重要なのかを解説

はじめに

サードパーティCookieの利用制限やプライバシー関連の法規制が進むなかで、自社が直接集めたファーストパーティーデータの価値が高まっています。ある調査では、マーケターの93%が「2年前より自社でのファーストパーティーデータ収集が組織にとって重要になった」と回答しており、企業の取り組み姿勢が変わりつつあることがうかがえます(参照*1)。

この記事では、ファーストパーティーデータの定義や他のデータとの違いを整理したうえで、具体的な収集方法と活用方法、そして導入時に押さえておきたい技術基盤や注意点を順に取り上げます。

●目次

ファーストパーティーデータとは何か

・ファーストパーティーデータの定義と具体例

ファーストパーティーデータとは、企業が自社のチャネルを通じて顧客から直接集める情報のことです。仲介業者を通さず、自社のWebサイト、モバイルアプリ、ソーシャルメディアアカウント、その他の顧客接点で取得できる点が特徴です。たとえば、訪問者の行動を追跡し、直帰率や特定ページの閲覧時間などを計測することが具体的な取得例に当たります(参照*2)。

全データの種類のなかでも、ファーストパーティーデータは最も価値が高いとされています。理由は、直接収集しているため品質が高く、正確で、自社の事業と関連していることが分かるからです(参照*3)。自社のどのチャネルでどんな情報を取得しているかを棚卸しすることが、活用の第一歩になります。


・ゼロパーティ・セカンドパーティ・サードパーティデータとの違い

ゼロパーティデータは、消費者が企業に対して自発的かつ積極的に提供する情報を指します。ファーストパーティーデータがユーザーの操作ややり取りを通じて収集されるのに対し、ゼロパーティデータはアンケートや好みの設定画面、プロフィール更新などを通じて本人が明示的に渡す点が異なります。企業は顧客の好みや意図を直接知ることができます(参照*4)。

セカンドパーティデータは、信頼できるパートナー企業が自社チャネルで集めたファーストパーティーデータを、契約にもとづいて共有してもらう形のデータです。一方、サードパーティデータは外部のデータ提供事業者が多数のソースからまとめて販売するもので、自社との直接的な関係がありません。サードパーティのサーバーはさまざまなサイトに設定された複数のCookieの情報を結合し、ユーザーの閲覧履歴や関心、個人情報などの詳細なプロフィールを作成できるため、プライバシー上の懸念が指摘されています(参照*5)。自社が扱うデータがどの分類に該当するかを確認し、それぞれの精度や取得経路の違いを把握しておくことが大切です。

ファーストパーティーデータが今重要視される背景

・サードパーティCookie規制とブラウザ対応の現状

Webサイトを閲覧した際にブラウザに一時的に保存される小さなデータであるCookieには、主にファーストパーティCookieとサードパーティCookieの2種類があります。現在Cookie規制の対象となっているのは主にサードパーティCookieであり、自社で集めたファーストパーティCookieはこれまで通り計測することが可能です(参照*6)。

Safariをはじめとする主要ブラウザでサードパーティCookieの利用が制限されたことにより、多くのパブリッシャーが広告収益の低下に直面しています。従来のCookieベースのターゲティング手法が機能しない環境では、広告主側のユーザーターゲティングが困難になり、パブリッシャーの収益機会にも影響が及んでいます(参照*7)。こうした環境の変化を踏まえ、自社チャネルで直接取得できるファーストパーティーデータへの移行計画を具体的に検討する必要があります。


・GDPR・CCPA・改正個人情報保護法などの法規制強化

GDPRやCCPAなどの各国法規制に加え、日本でも改正個人情報保護法が施行され、個人データの取り扱いに関するルールが厳格化されています。プライバシー意識の高まりが進むなかで、ファーストパーティーデータの活用がその影響を緩和する手段として位置づけられています。ある調査では、回答者の73%が「ファーストパーティーデータを活用することでプライバシー意識の高まりの影響を緩和できる」と回答しました(参照*8)。

法規制に対応しながらデータを活かすには、自社が取得するデータの範囲と利用目的を明確にし、同意の取得フローを整えることが求められます。規制の内容と自社の運用ルールを照らし合わせて、対応状況を定期的に確認することが欠かせません。

ファーストパーティーデータの主な収集方法

・Webサイト・アプリ解析とイベントトラッキング

Webサイト上に分析ツールを導入することで、ユーザーの行動を追跡し、有用な知見を引き出す力が高まります。ページビュー、離脱率、サイト滞在時間、ユーザーの属性情報などの指標を分析できます。さらにイベントトラッキングを使えば、ボタンのクリック、ファイルのダウンロード、フォーム送信といった個別の操作を詳しく調べることが可能です(参照*8)。

モバイルアプリでも同様に、画面遷移やタップ操作、プッシュ通知への反応などをイベント単位で計測できます。どの指標をどの目的で追跡するかを事前に設計し、不要なデータを集めすぎないように取得項目を絞ることが運用負荷を抑えるコツです。


・CRM・POS・ロイヤルティプログラムによるオフラインデータ統合

実店舗やコールセンターなどオフラインの接点で得られるデータも、ファーストパーティーデータの大切な構成要素です。PepsiCoはこうしたデータ活用によりファーストパーティーデータの蓄積量を50%以上拡大した事例として知られています。現在のPOS技術は各取引の詳細情報を取得でき、販売品目、価格(割引・税・チップ)、支払い方法(カード・現金・デジタルウォレット)、日時、ロイヤルティ番号、店舗や場所といった項目を記録します(参照*2)。

CRMに蓄積された問い合わせ履歴や購入履歴と、POSやロイヤルティプログラムの情報を突合させることで、顧客の全体像が見えやすくなります。まずはオンラインとオフラインで共通する顧客IDの設計を確認し、データの連携手順を整理しておくとよいでしょう。


・アンケート・嗜好センター・ゲーミフィケーションの活用

顧客が自発的にデータを共有できる仕組みをつくることが、ファーストパーティーデータ戦略を成功させる鍵だといわれています。企業は嗜好センター(好みの設定画面)、ゲーミフィケーションを取り入れたアンケート、パーソナライズされた商品提案ツールなど、対話型の体験を通じて価値の交換を生み出せます(参照*9)。

たとえば「おすすめ商品を診断する」といった形で顧客の好みを聞き取れば、ユーザーにとっては便利な情報が手に入り、企業にとっては正確な嗜好データが得られます。アンケートや嗜好センターで取得するデータ項目は必要最小限に絞り、回答の負担を下げることが回収率を高める工夫になります。

ファーストパーティーデータの活用方法

・パーソナライゼーションと顧客体験の向上

ファーストパーティーデータの活用方法として真っ先に挙がるのが、一人ひとりに合わせた体験の提供です。意思決定者の89%が「今後3年間のビジネスの成功にはパーソナライゼーションが鍵だ」と考えているという調査結果があります。ファーストパーティーデータを使えば、個々の嗜好にもとづいて体験を調整できます。具体的には、以前の購入履歴や閲覧履歴にもとづいて商品をおすすめしたり、カートに商品を入れたまま離脱した顧客にリマインダーを送ったりする施策が代表例です(参照*2)。

パーソナライゼーションの活用方法を検討するときは、どの行動データをどのチャネルで配信に反映させるかを設計段階で明確にしておくことが実行の精度を高めます。最初はおすすめ商品やカート離脱リマインダーなど、効果が見えやすい施策から始めて段階的に広げる方法が取り組みやすいです。


・セグメンテーション配信によるマーケティング最適化

ファーストパーティーデータの活用方法としてもうひとつ押さえたいのが、セグメンテーション配信です。ある企業の事例では、一定期間メッセージを開封していない顧客と、定期的に開封している顧客を分け、それぞれ異なるコミュニケーション戦略を実施する実験を行いました。その結果、開封率が大幅に向上しています。さらに注目すべき点として、セグメントを絞り込んだにもかかわらず、実際にリーチできた人数は減少せず、クリックなどのアクションを起こした顧客数もほぼ同等だったと報告されています(参照*10)。

全員に同じ内容を一斉配信するのではなく、行動データにもとづいて顧客をグループ分けし、グループごとに内容を変えるだけで成果が変わることを、この事例は示しています。配信対象の選定基準として「開封履歴」「購入頻度」「閲覧カテゴリ」などの軸を洗い出し、小さなテストから効果を検証していく手順が有効です。


・クロスセル・アップセルと顧客維持への応用

ファーストパーティーデータの分析は、自然なクロスセル(関連商品の提案)やアップセル(上位商品の提案)の機会を見つけ出すことに役立ちます。過去の購入を補う関連商品やサービスを提案でき、顧客の支出パターンと関心を理解して作成されたアップセルの提案は、選択肢に価値を加えます。商品の戦略的な組み合わせ販売、個別のメール施策、閲覧状況に応じて変わるWebサイトのコンテンツは、その効果をさらに高めます(参照*8)。

また、ある事例では、特定ブランドのアカウント未登録だが総合アカウントには登録している顧客に対して、そのブランドの情報を配信する施策を実施しました。この活用方法により新規顧客獲得の投資対効果が大幅に向上し、大規模な広告出稿に頼らず、既存の顧客基盤を活かして効率的な新規獲得と顧客維持を同時に実現しています(参照*10)。どの顧客層にどんな提案が響くかを、購入履歴やブランド横断の登録状況から分析し、配信シナリオに落とし込む作業が成果への近道です。

活用を支える技術基盤と選び方

・CDPによるデータ統合とアクティベーション

CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、さまざまなチャネルで集めたファーストパーティーデータを1か所に統合し、施策にすぐ使える状態にするための基盤です。強力なファーストパーティーデータ戦略は、顧客が自ら提供した宣言データ、操作ログなどから読み取る暗黙データ、そして欠損を補う合成データを統合して実現されるといわれています。宣言データは顧客の意図を伝え、暗黙データは隠れた行動を示し、合成データは欠落を埋めます。これらを組み合わせることで、顧客を多角的に捉えた上で、過度なターゲティングを避けつつ精度の高い個別対応ができるようになります(参照*9)。

CDPを選定する際は、自社が取り扱うデータの種類と量、連携先のツール、リアルタイム処理の要否といった条件を洗い出し、要件に合う製品を比較することが導入の失敗を防ぐポイントです。


・データクリーンルームを用いたセキュアなデータ連携

データクリーンルームとは、2者以上の参加者がそれぞれのファーストパーティーデータを共有・結合するために協力する環境のことです。ブランドやパブリッシャー、広告主、企業内の部門など、さまざまな主体が参加します。厳格な管理のもとで互いのデータから知見を得ながら、生データそのものは相手に渡さない仕組みになっています。各参加者は集合されたデータから追加の洞察を得ることができます(参照*11)。

実際の導入事例として、CDPのデータクリーンルーム機能を使い、メッセージングプラットフォーム内の顧客行動データと自社データを掛け合わせた分析を実施した企業があります。従来は登録済みの友だち全員への一斉配信が中心でしたが、メッセージの開封履歴を詳しく分析したところ、数か月間にわたって開封していない顧客が相当数いることが分かりました(参照*10)。データクリーンルームの導入を検討する場合は、連携先との契約条件や、どの粒度のデータをどこまで共有するかをあらかじめ取り決めておく必要があります。

ファーストパーティーデータ活用の注意点と失敗しないためのポイント

・プライバシー対応と同意管理の設計

ファーストパーティーデータの活用を進める上で、顧客のプライバシーへの配慮は避けて通れません。ある調査によると、米国の消費者の約3分の2が、個人データの利用方法について企業の透明性が高いほど信頼が高まると回答しています。また半数以上の回答者が、不必要なデータ収集を行わなかった企業に対してより高い信頼を寄せると述べています(参照*8)。

一方で、ファーストパーティーデータを外部と共有する際のリスクも指摘されています。独占的な管理を手放すと競争優位が損なわれる可能性があり、ユーザーが想定していない形でデータが共有されると顧客の信頼を損ないかねません(参照*12)。どのデータを、どの範囲で、どんな目的に使うかを同意取得の画面で明示し、不必要な項目は集めない設計を徹底することが信頼を守る土台になります。


・部門間連携とデータガバナンス体制の構築

ファーストパーティーデータ戦略を成功させるには、部門の壁を壊し、マーケティング・セールス・ITの横断的な協力が欠かせません。経営層の賛同、関係者の巻き込み、教育研修、マインドセットの転換といったステップを踏むことで、従業員がデータにもとづく意思決定を顧客中心の目的に沿って実行できるようになります(参照*9)。

ある導入事例では、主に3つの部門が連携しています。IT部門がデータ基盤の開発・運用とファーストパーティーデータの取得を担い、ブランド担当者や事業側のメンバーがマーケティング施策の企画・実行を行い、配信オペレーションを担当する代理店もステークホルダーとして関わっています(参照*10)。自社の体制を振り返り、データの取得から施策の実行までの役割分担を図に起こして可視化すると、抜け漏れのあるポイントが見つけやすくなります。

おわりに

ファーストパーティーデータは、収集から活用方法の設計、技術基盤の選定、プライバシー対応、部門間連携まで、一貫した戦略で取り組むことで初めて成果につながります。どれか1つが欠けても、データは蓄積されるだけで施策に活きません。

まずは自社が持つデータの棚卸しと、最も効果が見えやすい活用方法の小さなテストから始めてみてください。段階的に取り組みを広げることで、顧客との信頼関係を損なわずにデータの価値を引き出していけます。


・参照


〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。


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