海外マーケティング支援とは?越境戦略の進め方と成功のポイント

はじめに

海外に新たな成長の活路を求める企業が増えています。越境ECをはじめとする海外販売は、企業規模を問わず取り組める成長手段の1つです。

この記事では、海外マーケティング支援の全体像と越境戦略の進め方を整理し、市場調査からビジネスモデルの選択、物流・決済の整備、外部パートナーの活用まで、実務で押さえるべきポイントを順に取り上げます。

●目次

海外マーケティング支援と越境戦略の基本

・海外マーケティング支援の定義と対象範囲

海外マーケティング支援とは、自国以外の市場で商品やサービスを販売するために必要な調査・戦略立案・販路構築・販促活動などを外部の専門家やパートナーとともに進める取り組みを指します。対象範囲は広く、戦略策定から実行、現地での事業安定化に至るさまざまなフェーズでのアドバイスや実務支援が含まれます(参照*1)。

研究の面でも、海外市場開拓から急進的な国際化、越境ECやトランスナショナル創業など、多様な進出形態に着目した議論が進んでいます(参照*2)。自社で取り組む領域と、外部に委ねる領域を切り分けることが、海外マーケティング支援を活用する第一歩です。


・越境戦略が求められる背景と市場環境

越境戦略への関心が高まっている背景には、国内市場の先細りと海外EC市場の拡大があります。日本は中国と米国に次ぐ世界第3位のeコマース市場です。経済産業省が2024年9月に公表した調査では、B2B市場を日本の全産業カテゴリーの企業間取引の総額に基づいて約3兆3,000億ドル、B2C市場を1,760億ドル、C2C市場を180億ドルと見積もっており、eコマース市場は引き続き着実に成長していると報告しています(参照*3)。

越境ECは企業規模を問わずEC事業者にとって成長戦略の1つとされています。少子高齢化で国内市場の縮小が避けられない状況の中、多くの日本企業が新たな成長の活路を海外に求めており、「Made in Japan」ブランドへの信頼や独自の文化は世界中の消費者にとって大きな魅力だと整理されています(参照*4)。こうした数値と市場環境を自社の商品特性と照らし合わせることで、越境戦略を検討する出発点が見えてきます。

越境戦略の主なビジネスモデルと特徴

・越境EC・間接貿易・販売代理店の比較

越境戦略の入り口として代表的な手法は、越境EC、間接貿易、販売代理店などがあります。

越境ECは初期投資を抑えて海外販売を始められる手法で、中小企業でも取り組みやすい点が特長です。AmazonやShopify、Shopeeなどのプラットフォームを活用すれば、小さくテストしながら市場の反応を確認できます。一方で、物流・決済・返品対応などの体制整備が求められます(参照*5)。

間接貿易は、商社や輸出業者を介して海外の取引先へ商品を届ける方法です。自社で通関や海外取引先との交渉をすべて担わずに済むため、輸出実務の知識や海外ネットワークが十分でない企業でも始めやすい点が特徴です(参照*6)。

販売代理店モデルでは、現地に拠点を持つパートナーが営業・販売を担います。B2B2Cモデルの場合、商品はまず米国子会社や現地小売業者、ディストリビューターによって輸入され、その後、これら企業を通して顧客に配送される流れになります(参照*7)。

事業を国境を越えて拡大すると、大量仕入れによるコスト削減や物流の最適化、生産の効率化などを見込めます。これにより製品1つあたりのコストが低下し、国内市場のみで事業を行う場合よりも高い利益率を実現できる可能性があります(参照*4)。自社のリソースとリスク許容度を踏まえ、どのモデルから着手するかを比較することが実務上の出発点です。


・ECモール出店とソーシャルECの使い分け

越境ECの中でも、大手ECモールへの出店と、ソーシャルECへの出品では性質が異なります。大手中国越境ECモールに出店するメリットとして、システム基盤が整っているため出店までの流れが簡単であること、モールに一定数の顕在顧客・潜在顧客がいるため場合によっては集客が見込めることが挙げられています。商品のユニークポイントを全面に押し出した商品ページを作ったことで口コミが拡散され、販促費用をあまりかけずに実績を得られた事例もあります(参照*8)。

ソーシャルEC、たとえばWeChatミニプログラムへの出品には別の強みがあります。日本での自社ECサイトと近い手法で運営でき、ブランディングや販促をコントロールしやすいこと、情報の蓄積や分析がしやすいことがメリットです。値下げやクーポンに依存せず企画立案から実装までを自社で管理できる点は、ブランド構築の面で大きな強みになります(参照*8)。集客力を優先するならモール出店、ブランド管理を優先するならソーシャルECという視点で、販路の組み合わせを検討してみてください。

越境戦略の進め方と実践ステップ

・市場調査とターゲット国の選定

越境戦略を実行に移す最初のステップは、進出先の国・地域の選定です。市場規模や成長性、競合環境などのデータをもとに慎重に選定する必要があります。併せて政治リスクや為替相場、規制・関税などの制度、さらに文化・商習慣・宗教といったソフト面の調査も欠かせません(参照*5)。

海外進出では、現地の市場規模や競合状況、消費者ニーズなどの正確な情報を十分に入手できないケースが少なくありません。インターネット上の情報は古かったり偏っていたりすることも多く、誤った判断につながるリスクがあります(参照*5)。公的機関の統計や現地調査を組み合わせ、複数のデータ源で情報の精度を高める作業が求められます。


・ローカライゼーションと現地最適化

ターゲット市場が決まったら、次は現地最適化(ローカライゼーション)の工程に入ります。言語翻訳だけでなく、価格設定、商品展開、マーケティングなど、現地の文化や商習慣に寄り添う姿勢が成功の鍵です(参照*4)。

中国向けの越境ECでは食品分野に特有の留意点があります。輸出可能な品目、食品規格や中文ラベル表示の順守要否、製造企業登録の要否、税制など、確認すべき項目が多岐にわたります(参照*9)。進出先ごとの規制リストを作成し、商品カテゴリーに応じた要件を1つずつ洗い出す作業が不可欠です。


・物流・関税・決済インフラの整備

越境戦略を持続的に運営するには、物流と関税、決済のインフラ整備が土台になります。米国向けの物流では、現地フルフィルメントモデルが選択肢の1つです。商品を米国内の倉庫に一括輸入し、フルフィルメント業者を通じて国内配送する方式で、受注処理やピッキング、梱包、発送などを現地の業者が代行します。即日・翌日発送も可能になり、配送スピードを重視する企業にとっては大きな利点です(参照*7)。

関税面では制度変更への対応も見落とせません。米国ではデミニミスルールの撤廃により、越境ECで通関されることが多かった課税評価額800ドル以下の商品であっても、一般貨物の通関と同等の書類手続きが求められるようになりました(参照*10)。

中国では越境ECに関して独自の制度があり、直送モデル、保税区モデル、海淘モデルなど各手法に対してそれぞれ規制が設けられています(参照*9)。進出先の通関要件と物流コストを事前に洗い出し、自社の商品単価や出荷量に合った配送モデルを選ぶ作業が必要です。

成果を上げるマーケティング施策の選び方

・高成長企業が重視する施策と国別傾向

越境戦略を軌道に乗せるには、販路構築だけでなくマーケティング施策の選定が欠かせません。越境ECで成果の上がった施策を調べた調査では、前年対比で1.5倍以上成長しているEC事業者の回答で最も多かったのは「クラウドファンディング」で46.1%、続いて「リスティング広告」が43.8%、「アフィリエイト広告」が36.0%でした(参照*11)。

進出国数による違いも見られます。5か国以上に進出しているEC事業者への調査では、最多が「リスティング広告」で39.8%、続いて「アフィリエイト広告」が36.1%、「SNS広告」が35.3%でした。複数国に進出している企業がリスティング広告を重視しているのは、広範囲な対象に効率的にリーチできるメリットがあらためて認識されているためと考えられています(参照*11)。自社の成長フェーズと進出国数を踏まえ、優先する施策を見極めてください。


・外部パートナー・専門人材の活用法

越境戦略を自社だけで完結させる企業は少数派です。越境ECの運用における外注状況を聞いた調査では、「自社のみ」と回答したのは全体の5.0%にとどまり、95%が国内または進出先国の支援会社に外注していました。外注先の数は「3社」と回答した人が最も多く29.6%でした(参照*11)。

外部に委ねやすい業務には特徴があります。副業・業務委託で依頼しやすいのは、短期間で成果が見えやすく、専門性が高く、成果物が明確な業務です。正社員として常勤採用するにはコストが高すぎる領域や、社内に知見がなく学習コストが大きい部分を外部に委ねることが効果的です(参照*12)。

海外進出顧問と呼ばれる専門家は、企業の海外展開に関する知識や経験、現地ネットワークを駆使して、戦略策定から実行、現地での事業安定化に至るまで幅広いフェーズで実務支援を提供します(参照*1)。どの業務を内製し、どの領域を外部に任せるかを整理することが、海外マーケティング支援を使いこなす鍵になります。

越境戦略でよくある失敗と注意点

・マーケティング不足による撤退リスク

越境戦略で最も典型的な失敗パターンの1つが、マーケティング不足のまま進出してしまうケースです。本来、新規開拓先では改めてSTP分析や4P分析を行うことが必要ですが、別のECモールでの成功体験をもとに同じ戦略で出店してしまい、新規開拓先で思うように売上を伸ばせなかった事例があります。最終的にマーケティング調査を行ったところ、そもそもそのECモールにはターゲット層がほとんど存在しないことが判明し、やむなく撤退に至りました(参照*8)。

経営戦略におけるグローバル戦略の位置づけや目標が曖昧なまま進めてしまうと、具体的な行動計画に落とし込めず、社内での意思統一も図れません(参照*1)。出店前に進出先の顧客層と自社商品の適合性を検証し、利益が見込めるかどうかを数値で確認する工程を省かないことがポイントです。


・業務フロー・チーム体制の構築不備

越境ECではローンチがゴールではなく、その後も継続的に売上や利益を出すことが求められます。そのためには、受注、在庫管理、配送管理、商品管理、カスタマーサポート、予実管理など、運営面で持続可能なチーム編成を構築する必要があります(参照*8)。

計画の甘さや準備不足は、戦略設計・進出フェーズにおいて失敗の大きな原因となります(参照*1)。進出前の段階で、誰がどの業務を担当し、繁忙期にどう人員を補うかまで具体的に設計しておくことで、ローンチ後に業務が回らなくなるリスクを減らせます。各ポジションの役割と責任範囲を一覧に落とし込み、不足するスキルを外部パートナーで補う計画を立ててください。

成功事例に学ぶ越境戦略のポイント

・QRESTIA:テスト販売で現地ニーズを見極めて修正する

越境戦略では、最初に立てた仮説をそのまま押し通すのではなく、現地の反応を見ながら素早く修正する姿勢が重要です。

QRESTIAは2021年1月に台湾とシンガポールのShopeeへ出店し、当初は10万~20万円程度の腕時計を軸に販売を始めました。しかし、テスト販売とモール内の売れ筋調査を重ねた結果、台湾では家電や美容家電、シンガポールでは菓子などへの需要が見えてきました。そこで取扱商品を見直し、あわせて商品画像や見せ方も改善したところ、売上が大きく伸長しました(参照*13)。

この事例からは、越境ECでは「何を売るか」と同じくらい、「どの市場で、どの見せ方が刺さるか」を検証し続けることが成果を左右すると読み取れます。


・かね七:商流を見直し、顧客理解を深める

単に海外へ出荷できているかだけでなく、最終的に誰に、どのように届いているかを把握できるかが重要です。

かね七は、これまで商社等を通じた間接取引で輸出実績を持っていた一方、最終販売先を正確に把握しにくいことを課題としていました。そこで米国と台湾を対象に販路を見直し、台湾では直接輸出に挑戦して、直接的なマーケティングと販路把握・開拓を進めています。また、「FOOD TAIPEI」などの海外見本市への出展を通じて、煮干だしより昆布や鰹だしへの反応が良いといった差も確認でき、市場戦略の明確化につなげています(参照*14)。

この事例は、商流を変えることで顧客理解の質が変わり、商品戦略そのものの精度が上がることを示しています。


・陽だまりファーム:規制対応とローカライズを同時に進める

越境戦略では、販促や広告だけでなく、現地規制への対応と情報発信を一体で設計することが欠かせません。

陽だまりファームは、残留農薬基準が厳しいとされる台湾向けに試験栽培地を設け、商社や農薬メーカーと連携しながら基準をクリアして、生みかんの輸出を実現しました。その一方で、台湾在住コーディネーターとの面談を重ねて市場情報や販売チャネルへの理解を深め、ジェトロの専門家とともに英文サイトの刷新や現地言語でのSNS開設にも取り組んでいます(参照*15)。

この事例の要点は、規制を突破するだけでは十分ではなく、現地市場に合わせた伝え方まで整えて初めて継続的な販路拡大につながる、という点にあります。越境戦略は「売る仕組み」と「伝わる仕組み」の両輪で考える必要があります。

おわりに

海外マーケティング支援を活用した越境戦略では、進出先の市場調査、ビジネスモデルの選定、ローカライゼーション、物流・関税への対応、そしてマーケティング施策の実行と、複数の工程を一貫して設計することが求められます。

外部パートナーの力を借りながら、まずは自社の商品特性と照らし合わせてターゲット国を絞り込み、小さくテストして市場の反応を確かめることが可能です。各ステップで必要な情報と体制を事前に準備しておくことが、海外事業の成長を支える土台になります。


・参照


〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。


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