BtoBマーケでリードが売上につながらない原因と改善方法
●目次
はじめに
BtoBマーケで獲得したリードが売上につながらないという悩みは、多くの企業が共通して抱える問題です。リードを集めることに成功しても、商談化や受注に至らなければ、マーケティング投資は回収できません。なぜリードと売上の間に断絶が生まれるのでしょうか。そして、どのような仕組みを整えればこの断絶を埋められるのでしょうか。
リードが売上につながらない原因は、リードの定義の曖昧さや部門間連携の欠如、育成プロセスの不備など、複数の構造的な要因が重なって起こります。本記事では、リードが売上につながらない背景から具体的な原因の分解、改善ステップ、実践事例までを順を追って解説します。
リードが売上につながらない構造的な背景
・購買行動のデジタルシフト
BtoBの購買行動はオンラインへ大きく移行しています。購買者の75%が製品に関する情報を自分で集めることを好み、57%が過去1年間に営業担当者と一度も会わずにツールを購入したというデータがあります(参照*1)。営業が接触する前に、買い手は自ら情報収集を終え、候補を絞り込んでいるのです。
購買行動の変化により、リードとして登録された時点での検討状況はばらつきやすくなっています。リードの検討段階を正しく把握しなければ、適切な対応ができず売上につながらない状態が続きます。マーケティング部門は、リードがどのフェーズにいるのかを見極める基準を持つ必要があります。
・BtoB企業が抱える構造的課題
BtoB企業は、リード獲得から受注までの幅広い範囲でボトルネックを抱えています。ボトルネックとして最も多く挙がったのは「商談化〜受注」で、35.7%の企業が課題を感じています。さらに「顧客理解の不足」が33.0%、「リード獲得施策」が27.6%と続いています(参照*2)。
リード獲得そのものに課題を感じる企業も多く存在します。BtoB事業者の69.3%が新規リード獲得に課題を感じており、「十分できている」と答えた企業は5.9%にとどまりました(参照*3)。リードの量が足りないうえに、獲得したリードを商談・受注へ進める仕組みも弱いという二重の課題が、BtoBマーケのリードと売上がつながらない構造を生んでいます。
商談化しない5つの原因
・MQLとSQLの定義の曖昧さ
MQL(Marketing Qualified Lead)とSQL(Sales Qualified Lead)の区別が曖昧だと、商談化につながりにくくなります。MQLは、製品やサービスに関心を示しているがまだ購入の準備ができていない見込み顧客を指し、SQLは営業が直接アプローチすべき段階にある見込み顧客です。両者の違いは「営業対応の準備が整っているかどうか」とされており、MQLは営業と接触するまでに時間を置く必要がある一方で、SQLには早めに働きかける必要があります(参照*4)。
MQLとSQLの定義が社内で明確になっていると、マーケティングが育成すべき対象と営業が連絡すべき対象を判別しやすくなります。逆に定義が曖昧なままだと、まだ接触すべきではないリードを営業に渡してしまったり、購買意欲の高いリードを放置したりする事態が発生します。
・新規リード数偏重のKPI設計
KPIが新規リード数に偏ると、売上につながらないリードが積み上がりやすくなります。マーケティング施策で重視されているKPIは「新規リード獲得数」が32.1%で1位であり、その理由として「マーケティング施策でコントロールできるKPIだから」が58.0%で最も多く挙がっています(参照*1)。操作しやすい指標であるがゆえに、新規リードの数だけが目標になりやすいのです。
新規リードの数を追うだけでは、売上につながらないリードが大量に蓄積します。商談化率や受注率といった後工程の指標がKPIに含まれていなければ、マーケティング部門は「数を集めること」で目標を達成でき、リードの質への意識が薄れます。KPIの設計を見直し、商談化や受注に関わる指標を組み込むことで、数と質の両面をカバーする運用に変えていく必要があります。
・ナーチャリング不足による水漏れ
リードの育成、すなわちナーチャリングが不十分だと、検討途中で離脱しやすくなります。ナーチャリングの取り組みが成果を出せない主な理由として、セールスポイントが不明確であることと過度に複雑であることが挙げられています。一方で、単純で焦点を絞ったフローは優れた成果を出す傾向があるとされています(参照*5)。
ナーチャリングの仕組みが整っていない企業では、獲得したリードに対して一律のメール配信を繰り返すだけだったり、そもそもフォローの仕組み自体がない場合があります。リードの関心や検討段階に応じて提供する情報を変える、シンプルで明確なフローを設計することが、水漏れ防止の具体的な対策です。
・営業へのトスアップが早すぎる問題
営業に渡すタイミングが早すぎると、商談化につながりにくくなります。マーケティングが生み出すリードは、営業が必要とするリード全体の約30%にすぎないという調査結果があり、残りの70%は営業自身が開拓する必要があるとされています(参照*6)。
まだ育成が不十分なリードを早い段階で営業に渡してしまうと、営業の工数が無駄になります。営業はすぐに商談にならないリードへの対応に追われ、本来注力すべき有望案件に時間を割けなくなります。マーケティング側でリードの検討段階を見極め、一定の基準を超えたリードだけを営業へ引き渡すルールを運用することで、営業の生産性を守れます。
・リードの質に対する営業側の不信
リードの質に対する不信が強いと、営業がリードを活用しなくなります。マーケティングが提供するリードの質が営業の期待に達していない場合、営業側の信頼が低下する可能性があります(参照*7)。
営業が「マーケのリードは使えない」という認識を持つと、獲得・育成したリードが放置され、商談の機会が失われます。リードの質に関する基準を両部門で擦り合わせ、フィードバックの仕組みを作ることで、信頼の回復と活用率の向上に取り組む必要があります。
営業とマーケの連携不足が招く損失
・部門間KPIの不整合と対立構造
・情報共有とフィードバックの断絶
情報共有が不足すると、営業の協力が得られにくくなります。マーケティング施策の目的や顧客ニーズへの適合性が営業に十分伝わらないと、営業側は施策の価値や活用方法を理解できず、協力を得にくくなります(参照*7)。たとえば、マーケティングがウェビナーを開催しても、その内容やターゲットの意図が営業に共有されなければ、渡されたリードへの適切なアプローチができません。
営業側からのフィードバックが途切れても、施策改善の手がかりが失われます。営業が商談の場で得た顧客の反応やニーズがマーケティングにフィードバックされなければ、施策の質を改善する手がかりが失われます。BtoBの購買では複数の関係者が意思決定に関わるため、営業とマーケティングが顧客情報を双方向でやり取りする体制を作ることが、リードを売上につなげるうえで不可欠です。定例のミーティングやCRM上での商談メモの共有など、情報循環の仕組みを具体的に設ける必要があります。
売上につなげる改善ステップ
・リードスコアリングの設計と運用
リードスコアリングは、優先順位付けによって営業・マーケの対応精度を上げるための手法です。リードスコアリングとは、各リードに数値を付けて優先順位を判断する手法で、スコアは、リードが理想的な顧客像(ICP)にどれだけ合致しているか、そしてどれだけ自社に関心を持っているかを数値で表します。たとえば従業員50〜200名の企業が自社の最良顧客に該当するなら15ポイントを加算し、従業員20名未満の企業には5ポイントを減算するといった設計が考えられます(参照*4)。
研究では、機械学習を用いたリードスコアリングが、従来の手法と比べて質の高いリードの特定精度を高める可能性が示されています。ある研究では、2020年1月から2024年4月までにCRMから抽出した実際のリードデータを用い、15種類の分類アルゴリズムを評価した結果、勾配ブースティング分類器(Gradient Boosting Classifier)が精度とROC AUCの両面で他のアルゴリズムを上回りました(参照*9)。まずはICPを明確にしたうえでスコアリング基準を設計し、運用しながら基準を調整していく流れで取り組むとおいでしょう。
・SLA導入による受け渡し基準の統一
SLA(Service Level Agreement)によって受け渡し基準を統一すると、部門間の摩擦を減らしやすくなります。SLAは、営業とマーケティングの間で役割・責任・目標を明文化し、双方が合意した基準を設定する仕組みです。MQLからSAL(Sales Accepted Lead:営業が受け入れたリード)への移行プロセスにSLAを適用すると、マーケティングはリードの質に対する責任を、営業はリードへの迅速な初期対応に対する責任を明確に分担できます(参照*7)。
SLAがない状態では、どのタイミングでリードを営業に渡すか、渡されたリードに何日以内に連絡するかといったことが、各自の対応によって異なります。結果として、有望なリードが対応遅れで失われたり、質の低いリードが大量に押し付けられる問題が起きます。SLAの内容は、リードの引き渡し条件・対応期限・フィードバック頻度などを含め、定期的に見直しながら運用していきます。
・ファネル全体の可視化と継続改善
ファネル全体を可視化し、変換率を追跡することで改善点を特定しやすくなります。改善を持続させるには、マーケティングファネル全体を数値で可視化し、各段階の変換率を追跡する必要があります。評価指標としては、MQLの件数ではなく、ミーティングの設定数、パイプラインへの転換率、売上への貢献度を用いることが推奨されています(参照*10)。
商談時の反応や失注理由といったフィードバックを日常的に集め、次の施策や運用ルールの改善に反映させることが改善の基盤になります。ファネルの各段階で数値を定点観測し、転換率が下がった箇所を特定してスコアリング基準やSLAの条件を修正するサイクルを回すことで、リードが売上につながらない状態を段階的に解消していきます。
成果を出す企業の実践事例
・フィードバックを反映した施策改善でアポイント獲得率を高める
フィードバックをもとに企画・運用を変えると、アポイント獲得率が改善するケースがあります。ある企業では、展示会後のアポイント獲得率が17%に達し、導入前の3倍の成果を記録しました。オンラインのウェビナーでもアポ獲得率はおおむね3倍前後に向上しています。一方で、アンケートの反応は良かったにもかかわらず、アポ獲得率が約3%にとどまったウェビナーもありました。フィードバックをもとに振り返ったところ、そのウェビナーのターゲット選定や内容が商談化しづらいものだったことが判明しました。そこで商談につながる内容を意識してウェビナーを再企画したところ、アポ獲得率は8%と倍以上に改善しています(参照*11)。
・蓄積したリード情報の再活用で商談パイプラインを維持する
蓄積したリード情報の再活用で、商談につながる指標が伸びるケースもあります。蓄積したリード情報をもとにアカウントベースドマーケティング(ABM)を実施し、リードのリサイクルによってSALの数を順調に増加させた企業もあります。広告宣伝費を平常時の水準に戻して利益を改善する中でも、既存のリード資産を効率よく再活用することで商談のパイプラインを維持しました。蓄積したリードを効率よくリサイクルするABM体制を強化し、既存顧客から得た原資を新規顧客獲得に投資し続けるモデルで運用しています(参照*12)。
おわりに
BtoBマーケでリードが売上につながらない原因は、MQLとSQLの定義の曖昧さ、KPI設計の偏り、ナーチャリング不足、営業への早すぎるトスアップ、そして営業とマーケティングの連携不足に集約されます。いずれも単独ではなく、複数の要因が重なり合って「つながらない」状態を生んでいます。
改善のポイントは、リードスコアリングの設計、SLAによる受け渡し基準の統一、ファネル全体の可視化と継続的な見直しです。自社のリード管理を点検し、営業とマーケティングが同じ指標で動ける体制を整えることが、リードを売上に変える第一歩になります。
・参照
- (*1)セールスベロシティ①|リードが商談につながらないのはなぜ?
- (*2)プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 【マーケティング課題に関する調査】BtoBは受注までの導線設計や顧客理解の不足、BtoCは複数チャネルを運用する難しさが課題に | ナイル株式会社のプレスリリース
- (*3)プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – BtoB経営者の69.3%が「新規リード獲得に課題」、41.7%の企業で「マーケティング担当者不在」の実態 | 株式会社コミクスのプレスリリース
- (*4)MQL vs. SQL: What they are and how they differ
- (*5)How to nurture and accelerate leads through the SiriusDecisions Demand Waterfall®
- (*6)Forrester – The Revenue Stream: Turning the Sales Pipeline on Its Side
- (*7)『営業が協力してくれない』自社のBtoBマーケ施策が空回りする理由-お役立ち記事-電通 B2Bイニシアティブ
- (*8)日経クロストレンド – 頑張るほど空回り? BtoB展示会が「売上」につながらない理由:日経クロストレンド
- (*9)Frontiers | Articles – Frontiers | The relevance of lead prioritization: a B2B lead scoring model based on machine learning
- (*10)MarTech – Account-based GTM pods that turn strategy into pipeline
- (*11)SALES ROBOTICS株式会社 – 株式会社シーズリンク | 導入事例 | SALES ROBOTICS株式会社
- (*12)フリー株式会社 – 事業計画及び成長可能性に関する説明資料
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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