コミュニティマーケティングとは?成功事例と始め方を解説
●目次
はじめに
商品やサービスの情報があふれるいま、広告だけで顧客との関係を築くのは難しくなっています。そこで注目されているのが、コミュニティマーケティングです。
では、コミュニティマーケティングとはどのようなものなのでしょうか。本記事では、その定義や背景から5つのステップ、国内外の成功事例、そして失敗を防ぐ注意点までを順に説明します。
コミュニティマーケティングとは何か?
・コミュニティマーケティングの定義
コミュニティマーケティングとは、共通の関心や価値観を持つコミュニティを基盤とし、その活性化を通じて事業目標の達成を目指すマーケティング活動です。単に顧客を集めて交流させるだけではなく、そこから生まれる熱量や信頼関係を、ブランド価値の向上や事業成長に結びつける仕組み全体を指します(参照*1)。
ユーザーからユーザーへと情報や体験が伝わる点が、企業から顧客へ一方向に発信する従来の広告と大きく異なります。
・従来型マーケティングとの違い
従来型のマーケティングは、テレビCMやWeb広告のように企業から顧客へ情報を届ける一方向の流れが中心でした。メディアを通して不特定多数へ情報を届けるため、受け手の立場から情報に関わる余地は限られていました。
コミュニティマーケティングは、ユーザーからユーザーへと作用させる点に特徴があります(参照*3)。企業はコミュニティの場を設計し、そこでメンバーどうしが体験を共有したり疑問を解決し合うように、交流を促します。企業発の情報よりも、同じ立場のユーザーが語る言葉のほうが共感を得やすいため、ブランドへの信頼が自然に育ちやすくなります。広告の届きにくさが課題になる現在ほど、こうした多方向型の仕組みを理解しておくことが欠かせません。
・3方向コミュニケーションの構造
コミュニティマーケティングのコミュニケーションは、3つの方向で動きます。1つ目は企業からメンバーへの情報提供、2つ目はメンバーから企業へのフィードバック、3つ目はメンバー同士の交流です。従来型では1つ目のコミュニケーションが中心でしたが、コミュニティではとくに3つ目のメンバー間のやりとりが原動力になります。
メンバー同士の交流から生まれる熱量や信頼関係は、ブランド価値の向上につながります(参照*1)。また、ファン相互の交流が生み出すコミュニティには、人々のつながりの希薄化という社会的課題にも効果を発揮する可能性があります(参照*4)。この3方向の流れを設計段階で意識することが、コミュニティを活性化させる出発点になります。
注目される背景と市場動向
・広告効果低下とLTV重視の潮流
広告の届きにくさが進み、新規顧客の獲得だけに頼る成長モデルの限界が意識されるようになりました。デジタル広告の配信量が増え続ける一方で、ユーザーの広告回避行動も進んでいます。
マーケティングの世界で有名な「1:5の法則」では、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍かかるとされています。この状況下で、既存顧客との関係を深め、長くブランドを愛用してもらうことの重要性が増しています(参照*1)。既存顧客が長期的にもたらす価値、いわゆるLTV(顧客生涯価値)を高める手段として、コミュニティを通じた関係構築に目を向ける企業が出てきています。
・業界データが示す現在地
海外の業界調査からは、成長と課題の両面が示されています。回答者の17%がコミュニティ業務の専任担当者を置いていないと答えており、この数値は過去最高でした。一方でコミュニティ関連の業務はカスタマーサクセス、マーケティング、プロダクトなど多くの部門に広がっています。つまり、業務範囲は拡大しているのに、チームの人員は追いついていない状況です(参照*5)。
別の分析では、コミュニティチーム全体が削減され、コミュニティそのものが閉鎖されるケースが相次いでいるとの指摘もあります。しかし人々のオンライン上での交流量自体は変わっておらず、コミュニティの現状と今後のあるべき姿にずれが生じています(参照*6)。こうしたデータは、コミュニティの価値が否定されたのではなく、投資対効果の見せ方や社内連携の仕組みに課題が残っていることを示唆しています。
コミュニティマーケティングのメリットとデメリット
・企業・顧客双方の利点
企業にとっての大きな利点は、コアファンの熱量を活かしてブランドへの信頼を広げられる点です。コミュニティを通じてスケールさせていくことで、広告費だけに頼らない情報の拡散が期待できます。また、メンバーからのフィードバックが製品改善のヒントになりやすいため、開発サイクルに顧客の声を反映しやすくなります。
顧客側にとっても、同じ関心を持つメンバーとつながることで、使い方の工夫や課題の解決策を得られる場が生まれます(参照*3)。コミュニティが自律的に動き始めるまで育てられれば、企業・顧客の両方にとって持続的な価値を生む仕組みになり得ます。
・運営コストと炎上リスク
一方で、成果が出るまでに時間がかかるという点は見逃せません。コミュニティの価値はメンバー間の信頼関係やエンゲージメントといった無形の資産の上に成り立っており、売上などの直接的な成果に結びつくまでには少なくとも半年から1年以上の期間を見込む必要があります。短期的な成果を求めて売り込みに走ると、かえって顧客の信頼を損なう結果になりかねません(参照*1)。
予算面の課題も深刻です。海外の業界調査では、コミュニティマーケティングの予算が増えたと答えた回答者は26%にとどまり、18%は削減を経験しています。さらに全体の4分の1が自分たちの予算変動を把握していないと回答しており、社内での透明性が低い状態が続いています。一方で、85%がコミュニティは自社のマーケティング目標の達成に欠かせないと答えており、現場の信念と組織の投資判断にギャップが生じています(参照*5)。
国内外の成功事例
・LEGO Ideasの共創モデル
海外の代表的な成功事例として、LEGOが運営するLEGO Ideasがあります。2008年にクラウドソーシングの実験として始まったこの取り組みは、280万人以上の顧客が参加するコミュニティへと成長しました。メンバーが投稿したアイデアは13万5,000件を超え、コミュニティ内での議論や投票を経て商品化されたセットは大きな売上を生んでいます(参照*7)。
商品化されたアイデアの考案者には売上の1%が還元されます。顧客がアイデアを出し、選び、利益を共有するこの共創モデルは、コミュニティの熱量を事業成長に直結させた仕組みとして参考になります。
・サイボウズ kintone「キンコミ」
国内の成功事例としては、サイボウズが提供する業務アプリ作成ツールkintoneのユーザーコミュニティ「キンコミ」が挙げられます。2011年11月にリリースされたkintoneは16,500社以上(2020年8月現在)に利用されており、多くの担当者への聞き取りの中で、活用には「ユーザー同士のつながり」が非常に大切であることが確認されています(参照*8)。
キンコミは2020年6月にβ版を公開し、kintoneエバンジェリストやイベント参加者に先行して案内されました。同年10月時点で150名以上のユーザーが登録しています。既存のSNSやオフラインのユーザーコミュニティと並行して公式のオンライン掲示板を設けることで、製品活用のノウハウがメンバー間で循環する場を作った事例です。
・上勝町ゼロウェイストの地域連携
地方自治体による取り組みとして、徳島県上勝町の事例があります。上勝町は、既存の情報発信方法の課題としてマスマーケティングの限界を挙げ、SNSを活用したコミュニティマーケティングの推進を打ち出しました。コミュニティの定義、3つの要素、目的、背景、実施手法、KPI、メリットとデメリット、ポイント、実施事項を体系的に整理しています(参照*2)。
ゼロウェイスト(ごみゼロ)の理念を軸に町内外の関心層をつなぐこの取り組みは、企業ではなく自治体が主体となってコミュニティを設計した点に特徴があります。明確な理念がコミュニティの求心力となり、地域の課題解決と情報発信を同時に進めた事例です。
コミュニティマーケティングの始め方5ステップ
・目的とKPIの設定
始め方の最初のステップは、なぜコミュニティを運営するのかという目的を言語化することです。コミュニティ運営における最初かつ最も大切なステップが目的とKPIの設定であり、目的を明確にしなければ施策は方向性を失い、効果測定もままなりません(参照*1)。
目的によって、作るべきコミュニティのあり方、運営方針、活用すべきツールの選定の考え方は変わります(参照*3)。たとえば「製品活用の促進」が目的ならユーザー同士のノウハウ共有に重きを置き、「新商品の共創」が目的ならアイデア投稿と投票の仕組みが必要になります。目的をKPIに落とし込む際は、投稿数、アクティブ率、顧客満足度など計測できる指標を選び、運営チーム内で合意しておきます。
・ターゲットとペルソナ設計
目的が決まったら、コミュニティに参加してほしい人物像を具体化します。どのような課題を抱え、どの程度の製品知識を持ち、どんな情報を求めているのかをペルソナとして描くことで、コンテンツや運営方針の軸がぶれにくくなります。
kintoneのキンコミでは、エバンジェリストやイベント参加者に先行して案内することで、熱量の高い層を初期メンバーとして確保しました(参照*8)。このように、コアファンになり得る層を最初に招く設計が、コミュニティの立ち上がりを左右します。ペルソナを設計するときは、年齢や職種だけでなく、製品への関与度合いやコミュニティに期待する体験も項目に含めて整理します。
・形態とプラットフォーム選定
コミュニティの形態は、オンライン掲示板、SNSグループ、オフラインイベント、専用アプリなど多岐にわたります。目的とターゲットに合った形態を選ぶことが、参加のハードルと運営負荷の両面を左右します。
LEGOのLEGO Ideasは、当初は小規模なクラウドソーシングの実験として始まりましたが、顧客がアイデアを投稿し議論できる専用サイトへと発展しました。取り組みと組織を統合したことが、長期的な価値創出につながったと分析されています(参照*7)。プラットフォームを選ぶ際は、外部のSNSに依存するのか、それとも自社で場を持つのかを検討し、目的との整合性、データの管理方法、拡張性を比較して判断します。
・ルールとコンテンツ企画
場を用意しただけでは交流は生まれません。メンバーが安心して発言できるようにガイドラインを定め、投稿のきっかけとなるコンテンツを計画的に用意する必要があります。禁止事項だけを並べるのではなく、歓迎される行動を示すことで、初めて参加する人が投稿しやすい空気を作れます。
コミュニティマーケティングはプル型施策であり、一方的な売り込みやインセンティブだけでコミュニティを形成しても、その後の継続的な運営や拡大は現実的に難しいとされています(参照*3)。コンテンツは、メンバーが自発的に語りたくなるテーマ設定を軸に据え、定期的なお題の提示やメンバーの成功体験の紹介などを組み合わせて企画します。
・運営体制の構築
始め方の最後のステップは、誰がどの役割を担うかを決める運営体制の構築です。コミュニティ運営では、企画、投稿管理、データ分析、メンバー対応など複数の業務が同時に走ります。これらを属人的に回すと担当者の離職時にノウハウが失われるため、役割の分担と引き継ぎの仕組みを最初に設計しておくことが欠かせません。
CRMと連携したコミュニティデータを持つチームは、そうでないチームに比べて、成果を「非常に成功している」と評価する割合が2倍以上高いという調査結果もあります(参照*5)。運営体制を構築する際は、コミュニティの活動データを社内の顧客管理システムにどうつなぐかも含めて設計します。
失敗を防ぐ注意点
・過疎化と短期志向の落とし穴
過疎化を防ぐには、魅力的なコンテンツや企画を継続して提供する必要があります。立ち上げ当初は盛り上がっていても、魅力的なコンテンツや企画が継続的に提供されないと、メンバーの関心は次第に薄れ、投稿や交流が途絶えて過疎化してしまうリスクがあります。メンバーが参加し続けたいと思う価値を提供し続ける、計画的かつ継続的な努力が運営側には求められます(参照*1)。
短期的な数値を追いかけてプッシュ型の売り込みに転じることも、失敗を招く典型です。コミュニティマーケティングはプル型施策であり、インセンティブだけでコミュニティを形成できたとしても、継続的にマーケティングを運営し拡大していくことは現実的に難しいとされています(参照*3)。過疎化の兆候が見えたときに売り込みで穴を埋めようとせず、メンバーが求める情報や体験に立ち返ることが、コミュニティの持続につながります。
・効果測定とデータ連携の重要性
効果測定が弱いと、社内で予算を確保し続けるのは困難です。コミュニティの活動が事業にどう貢献しているかを示せなければ、社内で予算を確保し続けるのは困難です。海外の業界調査では、予算増を得た回答者は26%にとどまり、18%が削減を経験しています。さらに全体の4分の1が自分たちの予算変動すら把握していないと答えており、社内での情報共有に課題が残ります(参照*5)。
この課題を乗り越える手がかりとして、コミュニティのデータを社内のCRMと連携させることが挙げられます。効果測定の仕組みをコミュニティの設計段階で組み込み、活動データと売上や解約率などの事業指標を結びつけて報告できる体制を作ることで、継続的なコミュニティの運用につながります。
おわりに
コミュニティマーケティングは、目的の明確化、ペルソナの設計、プラットフォームの選定、ルール策定、運営体制の構築という5つのステップを着実に踏むことで始められます。LEGO Ideas、サイボウズのキンコミ、上勝町のゼロウェイストといった成功事例は、いずれもコアファンの熱量を基盤にし、中長期の視点で場を育てた点が共通しています。
短期的な成果を急がず、メンバーにとっての価値提供と効果測定の仕組みを両立させることが、コミュニティを事業成長の基盤にするうえで押さえるべきポイントです。
・参照
- (*1)ProFutureマーケティングソリューション|マーケターの知りたい!が詰まったマーケトランク – 【2025年最新】これからのコミュニティマーケティング戦略|LTVを最大化する手法と国内事例
- (*2)第二期 上勝町 ゼロ・ウェイストタウン計画
- (*3)株式会社日宣 | 創業75年超。日宣はコミュニティ・エコシステム・カンパニーを掲げ、広告やマーケティングを通じて世の中に貢献していく会社を目指します。 – コミュニティマーケティングの具体的な手法を解説!成功に導くポイントとは?
- (*4)https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/2005355/files/DB03023.pdf
- (*5)The 2025 CMX Community Industry Trends Report
- (*6)FEVERBEE|Community Strategy Insights
- (*7)MIT Sloan Management Review – Lego Takes Customers’ Innovations Further
- (*8)サイボウズ株式会社 - オンラインコミュニティ「キンコミ」開設
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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