商談化しないマーケの原因と解決策:リード獲得・ナーチャリング・マーケティング改善をつなげて成果を出す

●目次

はじめに

リード獲得の施策を増やしても、商談化につながらないという課題は多くのBtoB企業に共通しています。リード件数だけを追い続けると、マーケティング部門と営業部門のあいだで「量は足りているのに成果が出ない」という溝が広がります。

商談化を妨げる構造を特定し、マーケティング改善として何から手をつけるかがポイントです。原因はリードの質やナーチャリング設計の不備、部門間の基準のずれなど複数の層にまたがっています。本記事では、ファネル全体を見渡しながら原因の特定から改善手順、KPI設計までを順を追って解説します。

商談化しないマーケの全体構造

・ファネル構造と各指標の関係

商談化の問題を整理するには、リード獲得から受注までの流れを「ファネル」として捉え、各段階の指標を把握する必要があります。ファネルとは、見込み顧客が認知・興味・比較・意思決定と段階を進むにつれて人数が絞られていく構造のことです。マーケティング部門が創出したリードは、インサイドセールスを経てフィールドセールス担当へ引き継がれます(参照*1)。

このファネルの各段階には対応する指標があります。商談化率は「商談件数 ÷ リード獲得件数 × 100」、受注率は「受注件数 ÷ 商談件数 × 100」でそれぞれ算出されます(参照*2)。商談化率が低い場合はファネルの前半、受注率が低い場合はファネルの後半にボトルネックがあると判断できるため、どの指標が停滞しているかを特定することがマーケティング改善の出発点になります。


・MQLとSQLの定義・役割

ファネルの中間地点で使われる代表的な分類がMQLとSQLです。製品やサービスへの関心を示しているものの、まだ購入の準備ができていない段階のリードを指すのがMQL(Marketing Qualified Lead)です。一方、営業が直接アプローチすべき準備が整ったリードがSQL(Sales Qualified Lead)です。両者の違いは「営業対応への準備度」にあり、MQLにはさらなるナーチャリングが必要で、SQLは営業への引き渡し基準を満たしています(参照*3)。

MQLからSQLへの転換率は業界によって大きく異なります。BtoB SaaSでは13%、フィンテックでは11%、ヘルスケアでは13%、製薬では21%、人材・採用では12%と、10%から20%の範囲が一般的な水準です(参照*3)。自社の転換率がこれらの水準と比べてどの位置にあるかを把握することで、ナーチャリングやリード獲得のどこにマーケティング改善の余地があるかを見極められます。

商談化を阻む5つの原因

・リードの質とターゲットのズレ

リード獲得の件数が目標を達成していても、商談化が進まない場合、リードの質とターゲット像のずれが原因になっていることがあります。マーケティング部門は「リードは十分に渡している」と考え、営業部門は「リードの質が低い」と感じる構図が生まれやすく、責任の所在があいまいになりがちです(参照*2)。

この対立が続く限り、リード獲得の基準は見直されず、商談化率は低いままにとどまります。ターゲット企業の規模や業種、担当者の役職といった属性条件が部門間で共有されていなければ、どれだけリードの件数を積み上げても営業がフォローする対象にならないため、ファネル全体の効率が落ちてしまいます。


・ナーチャリング設計の欠如

マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入しても、ナーチャリングのシナリオ設計がないまま運用を始めてしまうケースがあります。ツールの導入自体が目的になり、「誰に・何を・いつ届けるか」の設計が欠落してしまうのです(参照*4)。

シナリオが存在しないまま一斉配信を繰り返すと、検討段階の異なるリードに同じ情報が届き、興味を失わせる原因になります。ナーチャリングはリード獲得の次に位置する工程であり、ここが設計されていなければ、MQLへの成長が起こらず商談化に至りません。


・MQL基準の未合意と引き渡し不全

MQLの定義がマーケティング部門と営業部門のあいだで合意されていないと、引き渡しの質が安定しません。マーケティング側が「MQLとして十分」と判断したリードを営業側が「まだ早い」と判断してフォローしないまま放置する、という状況が典型です(参照*2)。

営業部門とのヒアリングを通じてMQL基準を定量的に合意した企業では、MQLから商談への転換率が約1.5倍から2倍高い傾向が見られるとされています(参照*4)。基準の合意はマーケティング改善のなかでもとりわけ即効性のある施策であり、定義のすり合わせだけで商談化率が大きく動く可能性があります。


・施策がつながらない断絶構造

個々の施策の数字は悪くないのに、商談化につながらないというパターンがあります。各施策がそれぞれ別々の目的で動いており、顧客の検討プロセスとして一本につながっていないことが原因です。この結果、リードは増えても商談化しないという構造が出来上がります(参照*5)。

たとえば広告で獲得したリードにナーチャリングが設計されておらず、ウェビナーで集めたリードも別のチームが管理しているといった状態です。施策間の断絶は、ファネル上の「次のステップ」が不在であることを意味するため、リード獲得からナーチャリング、商談化への流れを一貫した設計として見直す必要があります。


・初動対応の遅れと属人化

リードが営業に渡った後の初動対応の遅れも、商談化率を下げる大きな要因です。マーケティング部門がリードを渡しても営業がフォローしていない、という指摘がある一方で、営業部門はリードの質が低いと感じている、という相互のすれ違いが発生します(参照*2)。

対応のスピードや方法が担当者個人の判断に委ねられている場合、成果のばらつきが大きくなります。どのリードにどの順番で対応するかのルールが明文化されていないと、温度感の高いリードが放置されるリスクが生じるため、初動対応の基準と手順を仕組みとして整備することが求められます。

ファネル再設計による改善手順

・検討段階の定義と移行条件の明文化

マーケティング改善の第一歩は、顧客の検討段階を明確に区切り、各段階から次へ進む条件を言葉にすることです。ある企業では、顧客の検討段階を「認知・興味・比較・意思決定」の4段階に整理しました。ここで大切だったのは分類そのものではなく、各段階で「顧客が次に進む条件」を明文化した点です。これにより、施策の役割が初めて明確になりました(参照*5)。

同様に、ステージの定義と移行基準をセットで決めておくことが推奨されています。たとえば「Lead」から「MQL」への移行では、MQLの定義を「製品の導入を検討している可能性が高い」とし、移行基準を「製品トライアルや問い合わせ、事例紹介のウェビナーへの参加」とする例があります(参照*1)。移行条件を関連部門間であらかじめ合意しておくことで、リード獲得からナーチャリング、商談化までの流れに一貫性が生まれます。


・段階別コンテンツとMAシナリオ設計

検討段階が定義できたら、各段階に合わせたコンテンツとMAのシナリオを設計します。MQLの定義は「属性(静的データ)」と「行動(動的データ)」の掛け合わせで設計します。属性基準の例としては、従業員数50名以上、対象業種がIT・製造・人材・コンサルティング等、役職が課長以上といった条件があります。行動基準の例としては、料金ページを2回以上閲覧、ホワイトペーパーを2本以上ダウンロード、ウェビナー参加後1週間以内にサイトを再訪問した場合などが挙げられます(参照*4)。

コンテンツ配信の工夫も商談化率に直結します。セミナーの案内メールを送る際、日程と概要を記載するだけでなく、実際のセミナー資料の一部をキャプチャ画像としてメール本文に配置する手法があります。この「資料のチラ見せ」により、メールのクリック率が最大1.85倍、コンバージョン率が1.56倍に改善した実績があります(参照*4)。属性と行動のスコアリングにこうした配信テクニックを組み合わせることで、ナーチャリングの精度を高められます。


・商談化条件の設定と営業への申し送り

ナーチャリングを経てMQL基準を満たしたリードを営業に引き渡す際には、商談化の条件と申し送り情報を明確にする必要があります。ステージの定義と移行基準をセットで決め、あらかじめ関連部門で合意を取っておくことが基本です(参照*1)。

申し送りの情報には、リードがどの検討段階にいるか、どのコンテンツに反応したか、スコアリングの根拠となった属性と行動のデータが含まれます。営業部門とのヒアリングを通じてMQL基準を定量的に合意した企業では、MQLから商談への転換率が約1.5倍から2倍高い傾向が見られています(参照*4)。引き渡しのルールが属人的であるかぎり、マーケティング改善の効果は営業工程で失われてしまうため、条件の明文化と情報の構造化が欠かせません。

KPI設計とマーケ・営業連携の要点

・共通KPIによる部門間の目線統一

マーケティング改善の効果を持続させるには、マーケティング部門と営業部門が同じ指標を見て動く仕組みが必要です。部門間で共通のKPIとリード基準を設定し、共通の最終目標を持つこと、そしてコンタクトから受注までの管理を各部門にまたがって行い活動を可視化すること、さらに自部門のKPI実績が最終的な売上に貢献したかを分析して改善していくことが要点として挙げられています(参照*1)。

KPIを設定することで、マーケティング活動によって発掘した有望見込み客数や、営業視点でアプローチに値する見込み客数といった指標を共有でき、両部門間の効果的な連携を促進できます(参照*6)。マーケティング部門だけの指標、営業部門だけの指標をそれぞれ追いかけている状態では、リード獲得から商談化までの一連の流れに対する責任が分散し、改善の起点が定まりません。


・パイプライン管理と改善サイクル

共通KPIの設定と並行して、パイプライン全体を管理する仕組みを構築します。パイプライン設計のポイントは、ステージが購入者のアクションベースで作られているかどうかです。たとえば訪問やフォローコールをステージに当てはめても、それはセールス側のアクションであり、それをしたから受注に近づいているとは証明しにくいとされています(参照*1)。

KPIは4つのカテゴリに整理したうえで、それぞれをどう使い分けるかという視点が欠かせません。すべての指標を同じ粒度や頻度で見る必要はなく、役割ごとに指標を整理すると判断がしやすくなります(参照*7)。指標の性質に応じて確認頻度を変えることで、改善サイクルを実務に組み込めます。

改善事例と数値変化

ここまで述べた改善手順を実際に実行した企業では、数値に大きな変化が現れています。国内のある企業では、商談化率が10%から25%へ向上しました。月間200件のリードから生まれる商談数は20件から50件に増え、リードから案件化までの平均期間も45日から30日に短縮されています。以前は全リードが均等に積み上がりどこから手をつければいいか分からない状態でしたが、改善後は温度感の高いリードから順番に対応できるようになりました(参照*5)。

海外でも同様の傾向が確認できます。マレーシアのヘルスケアテクノロジー企業では、リードから商談への転換率が183%改善しました。この成果は、マーケティング施策の強化、営業支援の仕組みづくり、そしてナーチャリングを担う事業開発チームの拡充を組み合わせた結果です。さらに、ナーチャリングを経ていないリードの商談化率が2021年時点で29.66%だったのに対し、MQLを経たリードは41.8%、SQLを経たリードは68.97%と、段階を踏むほど商談化率が高くなることが示されています(参照*8)。

いずれの事例でも、リード獲得の量を増やすだけでなく、ファネルの設計とナーチャリングの仕組みを整えたことが商談化率の向上につながっています。マーケティング改善は個別の施策の最適化ではなく、ファネル全体を通じた構造の見直しによって初めて数値に反映されることを、これらの実績が裏付けています。

おわりに

商談化しないマーケの原因は、リード獲得・ナーチャリング・営業引き渡しのいずれか一箇所ではなく、ファネル全体の設計と部門間の合意に根ざしています。検討段階の定義、MQL基準の合意、パイプラインの可視化といったポイントを押さえることで、マーケティング改善の効果を商談化率として実感できる土台が整います。

まずは自社のファネルのどこで数値が停滞しているかを特定し、最もインパクトの大きい箇所から手をつけてみてください。


・参照


〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。


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