超AI時代の認知×SEO戦略 ― 指名検索の裏で起きている「非指名流入が伸びる構造」を解剖 ―|前編

2026年4月22日マーケティング Week 春 2026で行われたセミナーでは、株式会社Hakuhodo DY ONEの冨田 真吾さんと登 章良さん、株式会社ZETTAI WORKSの小野 洋平さんが登壇。「超AI時代の認知×SEO」をテーマに、認知施策が検索行動やSEO、そして最新のAIO(AI検索最適化)に与える影響について解説しました。

セミナーでは、AIを活用したクリエイティブ事例やテレビCMのデータ分析を交えながら、指名検索の裏で起きている「非指名流入(一般ワードでの検索)」が伸びるメカニズムを深掘りしました。単なるブランド認知に留まらず、ユーザーの検索行動を意図的に引き出し、検索エンジンの評価やAI検索への引用へと繋げていく「情報の導線設計」の重要性を提示。広告・SEO・クリエイティブの垣根を超えた連携によって、デジタル時代の成果を最大化させるための実践的な知見をお伝えします。

登壇者

冨田 真吾(Hakuhodo DY ONE AaaSビジネス推進本部 マーケットデザイン局 事業戦略部 部長)
登 章良(Hakuhodo DY ONE ONE-AIO Lab R&D局 局長/ONE-AIO Lab 所長)
小野 洋平(株式会社ZETTAI WORKS 監督/AIクリエイティブディレクター)

●目次

1. 認知施策は、どのチャネルでも検索流入を生む

小野さん:私はこれまで、映像ディレクターとしてキャリアを重ね、現在は博報堂DYグループ発のAIクリエイティブスタジオである株式会社ZETTAI WORKSで、AI技術とクリエイティブを掛け合わせた映像制作に取り組んでいます。

これまでテレビCMや動画広告、SNS広告、屋外広告など、さまざまな認知施策の現場を見てきました。そうした現場で繰り返し観測されたのが、認知施策が非指名の検索流入に跳ね返るという現象です。

認知施策を打ったあと、狙ったブランド名やサービス名での指名検索が増えるのは当然ですが、ブランド名ではない「カテゴリ関連ワード」での流入までもが劇的に伸びる事象は、決して単発の偶然ではなく、30以上のブランド・300件超のプロジェクトに取り組んできた中で、数多くの現場で共通して見られる再現性の高い現象です。

なぜ、私たちがここまでブランド名ではない「非指名検索」を重視するのか。それは、ブランドをまだ知らない潜在顧客を確実に捉えるために不可欠な導線だからです。認知施策を単なるイメージの想起だけで完結させず、いかに検索という行動へ繋げ、その先の具体的な成果へと結びつけていくか。その戦略的な視点こそが、本日のテーマの核となります。

なぜ今、本テーマを考えるべきか。その理由は、以下の3つの条件がそろったからです。

・AI検索の台頭により、ユーザーの検索行動そのものが変化していること
・SEOの評価が高ければ、AI検索でも引用されやすくなるという相関関係があること
・AI技術によって、検索を生むためのクリエイティブが劇的に進化していること

つまり、検索を生むものを作り、検索で刈り取り、それを計測するという戦略が、2026年、今まさに現実的に回せる環境になっているということです。

認知施策による非指名の検索流入の跳ね返りは、決して数億円規模のテレビCMに限った話ではありません。よく「多くの予算がないと検索は動かないのでは?」と思われがちですが、実際にはデジタル動画広告、SNS、OOHなど、あらゆる接点が起点になり得ます。

実際、1億円を投じるテレビCMだけでなく、30万円程度の小規模なSNS広告であっても、検索が跳ね返ってくる原理やメカニズムは全く同じであることが分かっています。だからこそ、施策実施後には広告管理画面の数値だけでなく、検索数や検索流入の変化にも目を向ける必要があります。


・AI活用事例:AIクリエイティブのアテンションがもたらす、検索流入への波及効果

小野さん:では検索行動を促すために、どのような認知施策を行えばよいのかという点についてです。検索行動を促すフックの一つに「目を引くこと」、つまりアテンションの獲得があります。ここでは、AIを活用してアテンションを高めたクリエイティブの事例をご紹介します。

ある球団の事例では、狭いスタジオで撮影した素材に対し、AIでスタジアム級の背景や抜け感を合成。通常の撮影では実現しにくいスケール感のあるビジュアルを制作し、アテンションを高める認知施策を展開しました。その結果、施策実施後の第三者ツールによる推定では、サイトへの流入が1.5倍から2倍程度に増加。そのうちの6〜7割が「非指名検索」による伸びでした。

また、自社の非常に小規模な実験として、博報堂グループのビル内エレベーターだけで流した30秒程度の動画広告があります。一日1,000名に満たない極めてニッチな接触数でしたが、博報堂グループ内のクリエイティブ職をターゲットに「予算の都合でボツになってしまう企画」や「通常は撮影できない表現」といった、クリエイターが抱えやすい課題に対して、AIによる生成表現の可能性を訴求しました。

その結果、検索数等の上昇が確認でき、アテンションさえ得られれば、規模にかかわらず検索に跳ね返ることを裏付ける事例となりました。

認知施策を打ったあとは、管理画面だけでなく、その「外側」にある検索の動きをぜひ追ってみてください。そこには、思ってもみない成果が隠れているはずです。

2. 認知施策の裏側で起きているメカニズム

登さん:続いて私からは、SEOとAIO(AI検索最適化)の両面から、認知施策の裏側で起きていることを深掘りします。メカニズムは大きく以下の3つに分類できます。

①指名・非指名キーワードでの検索行動の変化(生活者)
②認知施策による副次的なSEO効果(検索エンジン)
③SEOによるAIOへの波及効果(AI検索エンジン)


・①指名・非指名キーワードでの検索行動の変化(生活者)

登さん:まず、ユーザーはテレビCMや動画広告を見てブランドを認知すると、興味関心を持ち、いずれ検索というアクションに移ります。Googleトレンドのデータを見ても、CM公開後にブランド名の日本語・英語表記や、CM掛け合わせのクエリがスパイクしているのが分かります。

ここで重要なのは、検索プラットフォームの広がりです。最新のデータでは、特定のキーワードにおいて、GoogleよりもSNS動画プラットフォームやAI検索エンジンの方が検索されているケースも確認されています。もしこれが事実であれば、Googleに匹敵する、あるいはそれ以上のマーケットが他の検索プラットフォームに眠っている可能性があるということです。

また注目すべきは、検索されるのは「ブランド名」だけではないという点です。飲料メーカーのCM事例を分析すると、ユーザーは以下のような多様な要素をフックに検索を行っています。

・ブランド・サービス名: プロダクト名やそれらのCM掛け合わせ
・視覚情報: 出演しているタレント名、動物(犬や猫など)、特徴的な被写体
・聴覚情報: BGMの楽曲名、アーティスト名、ナレーションの声優、CM内で連呼されるフレーズ

このように、認知施策は単に「名前を覚えてもらう」だけのものではなく、生活者の記憶に残ったあらゆる「フック」が検索行動の起点となるよう変化してきているのです。


・②認知施策による副次的なSEO効果(検索エンジン)

登さん:次に押さえておきたいのが、認知施策は指名検索を増やすだけでなく、検索エンジン上の非指名キーワード順位にも副次的な影響を与える可能性があるという点です。

特に注目すべきは、認知施策によって一般ワードの検索順位が押し上げられる現象です。実際に、テレビCMの放映などで指名検索が急増するタイミングで、「東京 不動産」や「東京 ホテル」といった非指名キーワードの順位が上昇するケースが確認されています。

こうした順位上昇の背景には、Googleの検索アルゴリズムに、機械学習を用いた「ユーザー行動に基づく動的な評価指標」が組み込まれていることが推測されます。Googleは、単に「クリックされたかどうか」だけを見ているのではなく、クリックした後のユーザー行動を分析することで、そのページが「ユーザーを満足させたか」を判定しているのです。

ここで、2024年に話題となったGoogleの内部文書漏洩の中で言及された「クリック区分」について触れておきましょう。

Googleは検索結果におけるユーザーの振る舞いを、主に以下の3つに分類して評価していると言われています。

バッドクリック:訪問後すぐに検索結果に戻ってしまう、不満足なクリック
グッドクリック:長期滞在し、検索意図が満たされたと考えられるクリック
ラスト・ロンゲスト・クリック:最後に、最も長く滞在して検索を終了したクリック

私たちで「ラスト・ロンゲスト・クリック」に近いユーザー行動を模した検証を行ったところ、その後の順位が上昇する傾向が確認されました。つまり、認知施策によって特定のニーズを持った良質なユーザーが流入し、満足して検索を終える。この蓄積が、Googleに「このサイトはこのキーワードにおいて価値がある」と判断させ、非指名キーワードの順位を押し上げるのです。

ただし同時に、これを人為的に模倣してシステム的に実行するようなことはガイドライン違反であり、是正対象になります。あくまで自然な検索行動の結果として蓄積されることに価値があり、ビジネス上のインパクトを期待して強引に操作すべきものではない、という点は明確に注意しておきたいと思います。


・③SEOによるAIOへの波及効果(AI検索エンジン)

登さん:そして、認知施策の効果が検索行動やSEOにとどまらず、AI検索/AIOにも波及する点についても触れたいと思います。

AI検索は、過去の膨大な「事前学習データ」に基づく回答と、リアルタイムの情報をブラウジングして補完する「RAG(検索拡張生成)」という2つのプロセスを組み合わせて回答を生成します。

RAGが情報を取得する「ソース(情報源)」として、現在の主要なAI検索は、主にGoogleやBingといった従来型検索エンジンのインデックスを活用しています。

実際に私たちが「ChatGPTの回答スコア」と「Google・Bingの検索順位」の相関を調査したところ、両者には強い正の相関が確認されました。つまり、AI検索は既存の検索エンジンを通じて情報を補完しているため、従来のSEOで上位を維持することは、AI検索において引用・表示されるための最短ルートなのです。

認知施策を行うことで検索が起き、そのユーザー行動の蓄積がSEO順位を上げ、それが巡り巡ってAI検索での露出を増やす。この一本の線でつながった構造を理解することが重要なのです。

〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。


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