アルゴリズム型情報流通時代に効果的な【PR×ショート動画】戦略|前編
2026年4月23日マーケティング Week 春 2026で行われたセミナーでは、株式会社イニシャル 代表取締役の藤原 由唯さんが登壇。アルゴリズム型の情報流通が主流となる今、どのように情報を設計し、認知拡大、そして売上へと繋げていくべきかについて解説しました。
セミナーでは、TikTokのマスメディア化や購買モデルの変容(SEESAS)を例に挙げながら、単なる「バズ狙い」のショート動画制作にとどまらず、従来の“メディアプランニング”という発想から脱却し、PR視点での“文脈開発”と複数アカウントを連動させる“コンテンツプランニング”へ転換することの重要性を紹介。ショート動画の大量投稿や切り抜き動画の活用がもたらす、圧倒的な拡散効果の裏側を公開し、多くの方が参加した本セミナーの模様をレポートでお伝えします。
登壇者
藤原 由唯(株式会社イニシャル 代表取締役)
●目次
1. 「3日で誰もが見たことのある状態になった」ショート動画の拡散力
現代の情報流通は、ユーザーが自ら検索する「プル型」から、プラットフォームのレコメンドによって情報が届く「アルゴリズム型」へと劇的に変化しました。弊社はこの今のアルゴリズム型情報流通時代において、ショート動画活用が重要であると考えています。
メディアの形式が変われば、人の心の動かし方も変わります。まずはその影響力を知っていただくために、1年半ほど前の参院選で起きた事例を紹介します。
参院選のとき、石破元首相(当時)のテレビ出演時のあるシーンがSNSで瞬く間に拡散されました。わずか3日ほどで、ほとんどの方が「あ、この動画見たことある」という状態になっていたかと思います。これは、まさにSNS時代ならではの情報の広がり方です。例えば、石破さんがテレビに出たとしても、今の時代、全国民がその番組を同時に見て翌日に一斉に話題にする…といった状態はなかなか起こり得ません。ですが、かつてテレビが担っていたような「短期間で爆発的に共通の話題を作る」というのを、今はショート動画がやってのけた。
実際のデータを見ると、当時の動画再生の内訳は、自民党などの「政党」公式が7.3%、「候補者本人」のアカウントからはわずか2.8%でした。それ以外の約90%は、いわゆる一般人の方による投稿です。石破さんたちの発言を独自の解釈で切り抜いたりまとめたり、あるいは自分の意見を添えて発信したサードパーティー(第三者)による動画が、圧倒的に再生されていたのです。
2. 「プラットフォームが勝手にフリークエンシーを稼いでくれる」時代へ
なぜ、公式よりも第三者の動画が回るのか。その裏側には、SNS各社が研ぎ澄ませているアルゴリズムがあります。
今のSNSは、視聴者が興味関心を持っている動画に近いものを、アルゴリズムがどんどんリターゲティングして流し続ける仕組みになっています。例えば、選挙期間中に一度政治系の動画を見ると、次から次へと関連動画が流れてくる。自分のスマホのタイムラインが、たった一度見た動画のジャンルで「ハック」されているような状態が起こるんです。つまり、「プラットフォームが勝手にフリークエンシー(接触頻度)を稼いでくれる」ということです。
これまでは、広告主が「20代女性にこのバナーを何回当てる」と設計して広告費を払っていました。しかし今は、アルゴリズムが勝手に、その人が興味のあるUGC(ユーザー投稿)を追いかけ続けてくれる。この構造を理解し、同一期間に複数アカウントから接触させる設計をすることが、今の広め方の基本になります。
3. 「TikTokは若者のものではない」ショート動画の前提条件が変わった
これほどまでにショート動画が活性化している要因の1つに、TikTokの「マスメディア化」があると考えています。もちろんInstagramやYouTubeも似たアルゴリズムを採用していますが、その中でもTikTokは、フォロワー数に関係なく「情報の質」だけで爆発的に広がる性質が最も顕著なため、ここで取り上げて紹介します。
TikTokといえば「若い女の子がダンスしている」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、現在は国内ユーザー数が4,900万人を超え、平均年齢も約40歳。もはや全世代が日常的にショート動画を見るのが当たり前になっています。つまり、若者向け施策としてではなく、あらゆる消費財や商材において適用できる手法になったといえます。言い換えると、全世代に届くプラットフォームになったからこそ、そこでの「情報の届け方」が重要になります。
4. 「きれいな絵」だけでは足りない。PR会社が見る“文脈開発力”
私共、株式会社イニシャルの親会社であるベクトルは、おかげさまで日本とアジアで最大級のPR会社としての地位を確立しております。しかし、昨今のショート動画を中心とした情報流通の変化を受け、先日のIR(投資家情報)では「PRエージェンシーからPR×ショート動画エージェンシーへ」という大きな方針転換を打ち出しています。
私たちがショート動画を数多く手掛ける中で確信したのは、「ショート動画を拡散させる力と、PR会社が培ってきた力は極めて近い」ということです。PR会社はこれまで、広告枠を買うのではなく、メディアが「取り上げたい」、生活者が「語りたい」と思うための「文脈」を設計してきました。この受動的な広告ではない「自発的な拡散」を狙う姿勢こそが、アルゴリズムによってレコメンドされるショート動画の世界に最も適しているのです。
5. 「AISASからSEESASへ」目的なく見る時代の認知設計
かつて主流だった「AISAS(アイサス)」は、テレビCMや雑誌広告などの強力なメディアを通じて商品を知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、検索して(Search)、購買(Action)、共有(Share)するという、広告主主導の「検索」を前提としたモデルでした。
これに対し、現代のSNS環境に適応した新しいモデルが「SEESAS」です。
- Surf:SNSを目的なくスワイプする
- Encounter:偶発的に興味のあるものに出会う
- Engage:好感を持つ(いいね・保存・記憶)
- Search:検索する
- Action:購買する
- Share:共有する
このモデルの根本的な違いは「ユーザーに目的があるかどうか」です。
AISASはマスメディアが強かった時代のモデルで、広告が「注意を引く(Attention)」ことから始まります。しかし今は、行動の起点が「Surf(サーフ)」、つまり「目的なく見る」ことに変わっています。
今のユーザーは、何かを探そうという特別な目的がなくても、隙間時間にInstagramを見たりTikTokをスワイプしたりします。この無意識の行動(Surf)の中で、たまたま自分が興味のあるものに出会う(Encounter)。この「偶発的な出会い」をいかに設計できるかが、今の時代にものを広める上での最大のポイントになります
ユーザーが「目的なく見ている」とき、それは広告を待っているのではなく、自分の興味を探している時間です。だからこそ、広告として強引に割り込むのではなく、オーガニックコンテンツに馴染んだ形で「出会い」を演出する必要があります。認知させてから興味を持たせるのではなく、日常のサーフ行動の中に自然に入り込む設計こそが、SEESAS時代の購買喚起には欠かせないのです。
レポート後編はこちらから
⇒アルゴリズム型情報流通時代に効果的な【PR×ショート動画】戦略|後編
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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