アルゴリズム型情報流通時代に効果的な【PR×ショート動画】戦略|後編
2026年4月23日マーケティングWeek 春2026で行われたセミナーでは、株式会社イニシャル 代表取締役の藤原 由唯さんが登壇し、アルゴリズム型の情報流通が主流となる今、どのように情報を設計し、認知拡大、そして実売上へと繋げていくべきかを紹介するセミナーを実施しました。前編では、TikTokのマスメディア化や購買モデルの変容(SEESAS)を背景に、PR視点での「文脈開発」がいかにショート動画の拡散を左右するかという理論的な側面を紐解きました。
後編の本記事ではAIや切り抜き動画を活用した具体的な施策スキームまで、理論をいかに認知拡大・実売上へと繋げるかの「実践編」を深掘りします。
レポート前編はこちらから
⇒アルゴリズム型情報流通時代に効果的な【PR×ショート動画】戦略|前編
登壇者
藤原 由唯(株式会社イニシャル 代表取締役)
●目次
1. POSと指名検索の相関
前編で解説したSEESASモデルにおいて、「認知拡大」や「売上(POS)」という結果に結びつけるためには、どのような情報流通を目指すべきなのでしょうか。
従来の広告モデルは、例えば1つのテレビCMを3ヶ月間流し続け、同じクリエイティブを積み重ねることで認知を取る手法でした。しかしアルゴリズム型のSNSにおいては、単純な再生回数という「量」以上に、「複数アカウント」から「複数の文脈」で「多重接触」させるという「情報の密度」が極めて重要になります。
一度、ある動画に興味を示したユーザーのタイムラインには、アルゴリズムによって関連動画が次々と運ばれます。その際に、自社アカウントだけでなく、メディアやインフルエンサー、一般人など多様なアカウントから、ある人は「時短」、ある人は「成分」といった異なる切り口で特定の商品の魅力を語っている状態を作ります。そうすることで、ユーザーのタイムラインがその商品の話題で埋め尽くされ、「自分の周りで流行っている」という強い確信(社会的証明)が生まれます。この「多重接触」の状態を作ることこそが、指名検索数を急増させ、最終的なPOS(売上)へと繋げる最大の鍵になるのです。
2. 情報流通を実現するベクトルグループの3つの施策スキーム
「複数アカウント・複数文脈での多重接触」という理論を実務レベルでどのように形にしていくのか、PR会社であるベクトルグループが実践している、情報流通を確実に発生させるための3つの実践的な方法を紹介します。
1. 独自のSNSメディアアカウントを活用した発信
ショート動画で効率的に情報流通させる方法として、信頼性のあるアカウントからの複数回発信+複数回接触を狙うというものがあります。
例えば美容案件であれば、美容に関心の高い層が既に集まっている専門メディア群を活用します。既にターゲットがセグメント(分類)されている複数のメディアから、同一のメッセージを同時多発的に投稿することで、狙った層のタイムラインを網羅的にハックし、短期間で強力な情報流通を創出することが可能です。
弊社では美容メディア「EMME」などグループ会社が運営するSNSアカウント群を保有しているため、戦略的に「複数アカウント・複数文脈での多重接触」という状況を生み出すことができます。
2. インフルエンサーによるマルチコンテキスト(多文脈)投稿
次にインフルエンサーを用いた施策です。これは非常にポピュラーな手法ですが、アルゴリズム時代においては「誰に頼むか」以上に「どう投稿してもらうか」の設計が重要です。
ここでもメガインフルエンサー1人に依存するのではなく、多数のインフルエンサーの起用を推奨しています。その際、商品が持つ核となる価値である「ワンメッセージ」を統一しつつ、それぞれのインフルエンサーの特性やフォロワーの属性に合わせて、見せ方や語り口(=文脈)を変えた動画を一定期間内に大量投稿します。これにより、ユーザーは「自分の好きな複数のインフルエンサーが、それぞれの視点でこの商品を勧めている」という状態になり、情報の信頼性が高まります。
3. AIを活用したUGC風ショート動画投稿
最後は、一般ユーザーによる投稿(UGC:User Generated Content)のような自然な投稿を戦略的に行い、動画による認知度向上および指名検索数の増加を目指すという方法です。インフルエンサー施策とは違い、「自分に近い一般の方が商品をレビューしている」という親近感とリアルな空気管を醸成するのが特徴です。
3. 「切り抜きで見ました」が主流になる中で、長尺資産をどう活かすか
次に、情報流通において重要な「大量投稿」や「多重接触」を、より効率的かつ爆発的に加速させる武器となる「切り抜き動画」について話します。
私自身、ビジネスオーディション番組に出演しているのですが「本編は見ていないけれど、切り抜きで見ました」と声をかけられることが非常に多いです。今、情報の流通において切り抜きは完全に主流になっています。
ここで重要なのは、長尺動画を「信頼の拠点」とし、切り抜きを「接点の最大化」として使い分ける戦略です。具体的には、1つの質の高い長尺資産(YouTube本編や対談、イベント動画など)を、「多角的な切り口」で数十本のショート動画に解体し、複数のアカウントから同時多発的に投下します。これが、今のアルゴリズムに最適化した長尺資産の活かし方です。
その威力は数字にも表れています。あるガジェット案件では、公式の長尺動画は3.3万回再生でしたが、そこからポイントを切り抜いて第三者アカウントから大量投稿したところ、合計で約190万回再生という結果になりました。元動画の約60倍もの効率で情報が広がったことになります。
長尺という資産を、浅く広く拡散させるために「切り抜き動画」によって社会に浸透させる。 この長尺と切り抜き動画の組み合わせこそが、情報の流通を加速させるポイントです。
4. まとめ
今回のセッションでは、アルゴリズム型情報流通時代において、ショート動画を単なる「バズ」で終わらせず、いかに実売上(POS)や認知拡大へと繋げるかという実践的な話をしました。
重要なのは、100点満点の動画を1本作ることではなく、「複数アカウント・複数文脈・多重接触」によって、ユーザーのタイムラインを意図的にハックする設計です。
そして、AIや切り抜き動画を活用して情報の流通効率を最大化させるスキームは、リソースの限られた現代のマーケティングにおいて極めて有効な手段となります。
ショート動画は、もはや一部の若者のための流行ではありません。このセミナーで共有した知見が、皆様のこれからの情報流通設計、ひいてはビジネスの成長を加速させる一助となれば幸いです。
〈監修・執筆者情報〉
経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。
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