2026年下半期若者の動向~「アテンション・デトックス」を実現する消費~|前編

2026年4月22日マーケティングWeek 春 2026で開催されたセミナーに、株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長の長田 麻衣さんが登壇。「2026年下半期若者の動向」をテーマに、いまの若者の消費マインドについて解説しました。

セミナーでは、独自調査に基づく「トレンド予測2026」のハイライトを交えながら、流行の背景にある「アテンション・デトックス」「じぶん探し消費」「計画的感情発散消費」という3つのキーワードを深掘りします。SNSや情報の洪水に疲れを感じながらも、デジタルと適切な距離を置き、安心できる環境で自分の感覚を取り戻そうとする若者のリアルな実態をお伝えします。

登壇者

長田 麻衣(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長)

●目次

「毎月200人のaround20と向き合う」SHIBUYA109 lab.の活動

私は2017年に株式会社SHIBUYA109エンタテイメントに入社し、マーケティング部やSHIBUYA109 lab.の立ち上げに携わってきました。私たちの会社は、SHIBUYA109という商業施設を運営しており、15歳から24歳の若者をターゲットに45年ほど事業を展開してきました。

SHIBUYA109 lab.は、その中にある若者マーケティングに特化した専門機関です。SHIBUYA109 lab.の活動は、SHIBUYA109が長年培ってきた「場所」「ブランド」「メディア」という3つの強力な基盤の上に成り立っています。

私たちは、SHIBUYA109という「場所」と、若者に長年支持されてきた「ブランド力」、そして発信力のある「メディア」を活用して、若者と企業をつなげる事業を広く展開しています。たとえば、館内でエンタメのポップアップストアを自社運営したり、メタバース上にSHIBUYA109を建設したりといった先進的な試みに加え、企業向けのマーケティングコンサルティングも行っています。単に調査をするだけでなく、商品開発のサポートから、SHIBUYA109の場所を使ったテストマーケティング、インフルエンサーマーケティングまで、一貫して支援できるのが私たちの強みです。

私たちの活動の基盤は、毎月200人の若者に実際に会ってお話を聞くことです。具体的には、私たちがSHIBUYA109渋谷店の館内に立ち、来館している子たちに直接声をかける「館内ヒアリング」を毎月100人に実施しています。さらに、毎週欠かさずグループインタビュー(座談会)も行っています。

先週は、若者の間で流行っている「スピ活(スピリチュアル活動)」について聞きました。神社巡りやお守り集めなど、軽いスピリチュアルを楽しむ子が増えていますが、彼女たちが日常の何を埋めるために、何を求めてそこに時間を使っているのか。ファッションに限らず、あらゆるテーマで彼らの「生の声」を分析し、消費マインドを紐解いています。

こうした活動を支えるのが、LINEでつながる約1,500人の独自若者ネットワークです(2025年6月時点)。

SHIBUYA109に来る子たちはギャルばかりというイメージがあるかもしれませんが、実際には平均的な生活水準の若者が多く、消費意欲が旺盛でトレンドに敏感な層です。彼女たちは世の中の消費マインドを少し早めに体現してくれるため、かなり先取りしたデータを提供できるのが強みです。

「トレンド予測2026」のハイライト

続いて、SHIBUYA109 lab.がメインターゲットとしている15歳から24歳の若者(around 20)の間で、今具体的にどのようなトレンドが起きているのか。「トレンド予測2026」で発表した6部門(カフェ・グルメ、モノ・コト、ファッション・ビューティー、アーティスト、ヒト、キャラクター)のなかからハイライト形式でいくつか紹介します。


1. ヘルシー、うま確、ワンハンド

食領域では、1リットルサイズの「デカドリンク」や「せいろ蒸し」が注目されています。

ヘルシーであることは数年前からの継続ですが、最近は「美味しいことが確定している(うま確)」という安心感が非常に重要です。また、コロナ禍が明け、お出かけと一緒に楽しめる「ワンハンドフード」が再び勢いを取り戻しています。


2. 継続する平成ブームの延長で広がる「逆輸入日本文化」

平成レトロは数年来の定番ですが、その形式が変化しています。

今の子たちは、韓国で流行っている日本のレトロカルチャーを見て、それを真似して楽しむという「逆輸入」の形で日本の旧文化を楽しんでいます。レコードやカセットテープ、MD、CDといった昔のガジェットやデバイスを、おしゃれなアイテムとして使いこなしています。


3. 超マルチユースでコスメもファッションアイテムに

ぬいぐるみ活動(ぬい活)やキーホルダー人気と連動して、コスメも「キーホルダーとして楽しめる」ことが大事になっています。リップホルダーでバッグに付けたり、おもちゃのようなデザインのコスメを持ったりと、メイクだけでなくファッションの一部として楽しむ感覚です。


4. キャラクター人気、継続

2025年のトレンド大賞から新設された「キャラクター部門」では、進研ゼミの「コラショ」や「ケロロ軍曹」など、企業や過去のIPが主役級に返り咲いています。

若者のノミネートを挙げていく際、あまりにもキャラクターが多すぎて、新たに部門をとして切り分けないとはみ出してしまうほどでした。100円ショップ「ダイソー」さんのキャラクター「だいぞう」など、企業キャラクターも多い印象です。

今も続く「クローズド&エフェメラル」な消費マインド

2026年のトレンドを理解することは、若者の興味関心の輪郭をつかむうえで欠かせません。しかし、マーケティングにおいてより重要なのはトレンドの背景にある消費マインドを理解することです。

たとえば、食における「うま確(美味しいことが確定している)」へのこだわりや、アナログなガジェットへの回帰は、情報の洪水の中で「失敗したくない」「手触りのある確かな実感が欲しい」という心理の表れでもあります。こうした個別の事象を「点」で捉えるのではなく、それらを貫く共通の消費マインドを読み解くことで、次なる一手が見えてきます。

2026年の消費マインドを理解する前提として、まず2025年を振り返ります。そのキーワードは「クローズド&エフェメラル(閉鎖的で一時的)」です。

2023年に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが第5類に移行して以降、気軽に外出ができるようになった反動で、SNS上でのコミュニケーションや情報量が戻り、その情報量の多さに「疲れ」を感じている若者が増えています。SNSは不特定多数に見せる場ではなく、鍵垢(非公開アカウント)や24時間で消えるストーリー、そしてBeReal.など、閉じた場所で楽しむことが主流になりました。

2026年のトレンド予測も、この「情報の過多による疲れ」という土壌の上に成り立っています。2025年の消費マインドと2026年トレンド予測を踏まえて、今の若者の消費マインドを3つのキーワードに分けて整理しました。

①アテンション・デトックス
②自分探し消費
③計画的感情発散消費

①「アテンション・デトックス」SNSの喧騒から一時的に離れる行動

2026年の消費キーワード、1つ目は「アテンション・デトックス」です。

これは、SNSのざわざわした空気から物理的・精神的に離れて、誰の目も気にせず心と体を休ませる行動のことです。スマホを置いてデジタルから距離を置こうとする動きが、今の若者のトレンドにもはっきり現れています

物理的遮断: スマホなし旅行、編み物、ブレスレット作り
クローズドな交流: yope(少人数限定のSNSアプリ)、BeReal.、少人数での画像共有

スマホをコインロッカーに預けて街を散策する「スマホなし旅行」や、両手を使う作業(編み物など)に没頭することで、強制的にスマホから離れる時間を作る動きが目立ちます。また、SNS自体も「開かれた場」から「閉じた場」へと重心が移っており、共有相手を限定したコミュニケーションが支持されています。


・「65%が離れる時間を作りたい」調査で見えたスマホ・SNS疲れ

SHIBUYA109 lab.が2026年2月に実施した調査(15歳〜24歳の574人対象)では、「SNSの利用時間を減らしたい」という回答は68%、「完全に離れる時間を作りたい」は65%に達しました。しかし、実際に意識的にスマホを触らない時間を作れている人は38%にとどまっています。離れたいのに離れられない、この大きなギャップこそがいまの若者のリアルな実感です。


・「3つのアテンション」が疲れを生む

若者が感じている「疲れ」の正体を、3つのカテゴリーに分類しました。ここで言うアテンションとは、「自分の意識がどこに向いているか、あるいは誰の視線を感じているか」という心のエネルギーの向け先のことです。SNSが生活のすべてになった結果、若者の心は常に以下の3つの方向から、休まることなく刺激され続けています。

1.自分に対するアテンション
これは、「自分が他人にどう見られているか」を過剰に意識してしまうことで生じるストレスです。自分の投稿やプロフィールに対する、周囲からの視線や反応に対する意識から生まれます。

「いいね!」の数を気にしてしまったり、頑張った投稿への反応が少ないと「自分には人望がないのかも」と不安になったりする声がありました。

2.人に対するアテンション
これは、「周囲の動きやトレンドから取り残されないように」と気を配り続けることで生じるストレスです。友人やコミュニティ、世の中の動向を常にウォッチし続けなければならないという義務感から生まれます。

バズっている動画や最新トレンドを追っていないと、会話についていけなくなる不安、常に情報をアップデートし続けなければならないプレッシャーに疲れています。

3.情報に対するアテンション
これは、自分の意思とは無関係に流れ込んでくる膨大な情報によって生じるストレスです。アルゴリズムによって受動的に消費させられる、情報の濁流に対する意識から生まれます。

炎上投稿や誹謗中傷に心が削られてしまう。見なければいいとわかっていても、ついコメント欄まで追ってしまう負のループも起きています。また、普通の投稿だと思って見ていた動画が、実は企業のPRだったと判明した瞬間に強い疲労感を覚えるという声もありました。


・「不安・劣等感・自己肯定感低下」疲れの背景にある感情

スマホ疲れを感じている357人に対して、その要因や背景にある感情を聞いたところ、疲れの根底にはかなり共通した感情があることも分かりました。

疲れの要因として整理した際、各分類内の一項目当たりの選択人数平均は以下の通りでした。

  • 自分に対するアテンション:平均73人
  • 人に対するアテンション:平均45人
  • 情報に対するアテンション:平均62人

もっとも疲れの要因として強く表れていたのは「自分に対するアテンション」でした。どのアテンションに対しても、共通していた感情は「不安」の強さです。具体的には、自分に対するアテンションには「虚無感や劣等感」、人に対しては「自己肯定感の低下や孤独感」、情報に対しては「自己肯定感の低下や面倒くささ」が背景にあります。若者はただ面倒だから離れたいのではなく、比較や反応によって自信を失うことから「自分を守るため」にデトックスを求めているのです。

〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

経歴:マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、300近い出展社と数万人の来場者をご支援しています。支援実績を活かしてマーケティングに関わる有益な情報を発信します。


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